【MLB】サイン盗みの効果は「驚くほどゼロに近い」 米メディアが検証「最大の代償は名声」

2017年に世界一となったアストロズ【写真:Getty Images】

データサイエンティストが分析、2017年の世界一は「不正をしてドジャースを破ったのか?」

 野球界に大きな衝撃を与えたアストロズのサイン盗み。ゴミ箱を叩くなど“不正”により得た2017年のワールドシリーズトロフィーの返還を求める声が後を絶たない。そんな中、米紙「LAタイムズ」はサイン盗みが打撃成績向上に直結していなかったことを伝えている。

 当時ドジャースに所属していたダルビッシュ(現カブス)らも被害者となった2017年のワールドシリーズ。アストロズは圧倒的な打撃力でチャンピオンリング、トロフィーを手にした。サイン盗みによってドジャース投手陣を打ち崩したとみられているが、データ分析のスペシャリストの意見は違ったようだ。

 米紙「LAタイムズ」は「アストロズは不正をしてドジャースを破ったのか? 数字はそれを示さない」との見出しで、データサイエンティストのロバート・アーサー氏の分析を紹介。「ゴミ箱叩きの正味の影響は、驚くほどゼロに近いです」と、ほとんど意味がなかったことを伝えている。

 アストロズの打者は16年にチーム1452三振。両リーグで4番目に多く、MLB史上8番目に多かったが17年は一気に365個を減らして1087三振。両リーグを通じて最少だった。数字として三振数の減少が出ているが記事では17年は三振の少ない打者が多くラインナップに加わっていたことを指摘している。

間違った球種を伝えられると打率、出塁率、長打率を落とす「役立たないのに」

 アーサー氏によると変化球を伝える叩く音は93%の正確さ、直球を伝える音なしは65%の正確さだったようで「それがカギ。なぜなら、間違ったシグナルは正確なシグナルが役立つ以上に悪影響を与えるからである」と理由を説明。

 正確に伝えられた球種ではアストロズはチームとして、打率を7厘増となる.289、長打率は2分5厘増の.503に上げたが、間違って伝えられた球種では打率を4分5厘減、出塁率は5分2厘減、長打率は9分3厘減になり「ダメージが大きかった」と、サイン盗みによる“弊害”が生まれていることを証明している。

 無駄な努力と言わんばかりにアーサー氏は「彼らはなぜ役立たないのに続けていたのでしょう。継続するのに大きな代償のリスクはありましたし、見つかってその代償を支払いました。それがとても少ないメリットのためだったのです」と、疑問を抱いていた。

 サイン盗みによる効果は少ないことを証明し、打者有利と見られていた周囲の意見を否定したが「もちろん最大の代償は名声である。ワールドシリーズチャンピオンは通常、生涯ヒーローである。2017年のアストロズはそれを永遠に失ってしまった」と、不正自体を否定することはなかった。(Full-Count編集部)

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