心配と混乱と

 冬から春先へと流れる時間の速さを、昔の人はこう言い表した。〈一月往(い)ぬ、二月逃げる、三月去る〉。月の名の頭に韻を踏んでいる▲とりわけ3月は、年度の終わりであり、学校では卒業式、修了式がある。入試がある。進学や転勤に伴う引っ越しもある。何かと気ぜわしく、時は駆け足で過ぎる季節だろう▲そこへ「新型ウイルス禍」への不安が重なり、さらに混乱までもが広がっている。文部科学省は全国の小中学校、高校、特別支援学校を臨時休校するよう求め、あちらこちらで悲鳴が上がる▲県内でも来週、全てが休校になる。3学期の授業を終えておらず、教育現場には不安がある。共働きやひとり親にとっては、子どもの預け先はあるか、仕事を休むとしたら勤務先の理解は得られるか、と心配や混乱は尽きないという▲いま、感染の急な拡大を防げるかどうかの瀬戸際だとしても、国民や行政に準備の間を与えないほどの性急さには首をひねる。安倍晋三首相は与党や文科省の反対を押しのけて休校要請に踏み切ったとされるが、深い議論はなされたか▲きのうは「教科書1ページ分でも、と思ってスピードアップして授業を進めた。これでよいはずはないけれど」と親しい小学校の先生からメールが来た。この駆け足の季節に人は急(せ)かされ、2月は逃げる。(徹)

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