マスクを探して再び25キロ、どこも品切れなのに売上激減のナゼ

日を追うごとに国内での感染者数が増加している、新型コロナウイルス。感染予防のためにマスクを買い求める人は多く、ドラッグストアの開店前に行列ができることも日常茶飯事になろうとしています。

「MONEY PLUS」では、2月8日の配信記事で東京都内のマスク販売状況と全国の感染予防・除菌関連商材の売上動向を報じました。それから3週間が経過した今、状況はどう変わっているのか、再度調査を実施。意外な結果が浮かび上がってきました。


2月上旬と同じルートを再度探索

新型コロナウイルスの感染拡大が深刻化し始めた2月7日、記者は東京都内を25キロメートル移動し、(1)都心の住宅街、(2)都心の繁華街、(3)郊外の住宅街という3つのエリアで、合計12店舗のマスク販売状況を調べました。結果は、12店舗中2店舗でマスクの取り扱いがあり、蒸気が出るタイプの商品も含めると4店舗で販売が確認できました。

あれから3週間近く。当時との違いを確認するため、2月25日に同じ25キロのルートをたどり、マスクの販売状況を調べてみました。スタートは、前回と同じ、JR田町駅前の商店街。時刻は前回よりも1時間早い、14時30分です。

3週間前は店頭に「マスク売り切れ」という手書きの張り紙を貼り出していた大手チェーンの店舗は、この日も店頭に「本日のマスク・除菌系の入荷はありません」という張り紙が出ていました。前回との違いは、手書きから印刷に変更されていた点です。

手書きだった張り紙は印刷に変わっていた

周辺の数店舗も回ってみましたが、いずれも関連商材は欠品中。ただし、2月上旬はまだ店舗側も対応が整っていなかったものが、今回は入荷状況や商品群ごとの状況が掲示されており、かなりシステマティックに洗練されていたのが印象的でした。

2月上旬に販売していた店舗も全滅

田町駅周辺の店舗が全滅だったため、前回と同様、国道1号線を白金高輪方面に向かいます。以前は店内の階段に「各種マスクは品切れです」という張り紙を出していたホームセンターは、店舗入り口の自動ドアに掲出場所を変更。マスクに関する店頭での問い合わせが多く寄せられていたことが想像されます。

さらに歩を進め、2月7日にはマスクが売られていたマツモトキヨシにたどり着きました。前回商品が売られていた入り口脇の棚を確認しましたが、以前はマスクがあった場所はうがい薬に変わっていました。マスクを探して店舗の奥のほうに向かうと、残っていたのは値札だけで、商品は完売。入荷も未定という張り紙が貼られていました。

前回は入店しなかった東京メトロ白金高輪駅の近くのドラッグストアものぞいてみましたが、こちらもマスクは売り切れ。ここで都心の住宅街を諦め、2月7日に割安なマスクが売られていた新宿西口に移動します。

しかし、こちらも前回マスクが見つかったダイコクドラッグにマスクの形跡はなし。同系列の別店舗を訪ねてみましたが、こちらも蒸気マスクが売られているだけで、一般的なマスクはありませんでした。

マスク販売額はピーク時の13%に縮小

2月7日にはマスクが残っていた2店舗が、25日にはどちらも品切れとなっていました。日本国内でも感染が拡大している中では、無理もないのかもしれません。

これだけ品切れの店舗が続出しているのであれば、マスクの売り上げも前回以上に膨らんでいるのではないか。そんな仮説を確かめるべく、前回も全国の販売データを調べてもらった市場調査会社インテージから、最新データを取り寄せました。

しかし、ここで意外な結果が明らかになったのです。前回の記事化時点で最新のデータだった1月27日~2月2日は、全国のスーパー、コンビニ、ドラッグストアなど約4,000店で187億円(平年の8.9倍)にも上ったマスクの販売額は、その1週間を境にピークアウト。翌週には平年の3.1倍程度まで低下し、直近の2月17~23日は25億円と平年の約1.4倍まで縮小していたのです。

2月上旬にはマスクを販売していた店舗でも現在は品切れとなっているくらいなので、肌感覚と実績数値との間にはかなりの乖離が生じてしまいます。インテージの担当者も「あまり経験のない事象が起きています」と困り顔。考えられるとすれば、次のような仮説です。

マスク用スプレーが販売急伸のワケ

1月27日~2月2日の週は、まだ国内の感染者数が2ケタで推移していた頃。マスクの市中在庫も潤沢に残っており、それを販売に回したことで売り上げが急拡大。しかし、2月中旬以降に感染者数が爆発的に増え始めると、消費者の不安心理も一気に増大。在庫もはけてしまい、売り上げが急激に縮小したと考えられます。

一方で、政府がメーカーにマスクの増産を要請したことで、供給量は平年よりも増えているはず。都内の店舗は供給を需要が大幅に上回っているため、欠品騒動となっていますが、地方では増産されたマスクが店頭に並び、平年を上回る販売額につながっているとみられます。

マスク以外の除菌関連商材の売り上げ推移も、マスクと同様、1月27日~2月2日の週に急伸し、その後はピークアウトしています。背後には、マスクと同じ事情が考えられます。

ただし、マスク用除菌・ウイルス除去スプレーだけは直近の2月17~23日の週に再び売り上げが急伸しています。その背景として、マスクの欠品が深刻化する中で、マスクの使い回しのためにスプレーを購入する人が増えているのではないか、という推論が立てられそうです。

マスクに出合えるのは開店直後だけ?

ここで、話をマスク探しに戻します。前回取材と同様、最後に郊外の住宅街として、東京・府中市を調査しました。京王線・府中駅の駅前の数店を回りましたが、こちらでも一般的なマスクは見当たらず、かろうじて1店舗で蒸気マスクが売られているだけでした。

今回の取材で訪れたのは、合計9店舗。このうち、一般的なマスクが売られていたのはゼロ。蒸気マスクまで範囲を拡大しても2店舗でした。

2月上旬であれば、夕方以降でもマスクを販売している店舗がありました。しかし現在は、開店前から大勢の人が行列をつくり、入荷直後の商品を根こそぎ買いきってしまう状況。残念ながら、開店直後でないとマスクに出合えるチャンスは激減しているのかもしれません。

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