体験語り被災地思う 復興考えるシンポジウム 横浜

東日本大震災からの復興について話す(左から)赤坂さん、吉増さん、司会の樋口良澄教授=横浜市中区

 東日本大震災からの復興を、人の心や生活に目を向けながら考えるシンポジウムが29日、横浜市中区の関東学院大関内メディアセンターで開かれた。被災地を巡り復興に関わってきた学習院大教授で民俗学者の赤坂憲雄さん、宮城県石巻市などで詩や映像作品を制作してきた詩人の吉増剛造さんが、それぞれの体験と視点で震災発生から現在までを語り、会場とともに被災地への思いを深めた。同大防災・減災・復興学研究所の主催。

 赤坂さんは、被災地に完成した巨大な防潮堤と両岸をつなぐ橋を住民が見て、「誰が渡って、どこに行くんだろうね」とつぶやいたというエピソードを紹介。「風景の根っこにあるものを痛烈にえぐり出す言葉だった」と述べ、「内側に暮らす人を守るのではなく、防潮堤を造るために造っている」と指摘。「われわれはもっと途方に暮れた方がいい。そこから紡ぎ出される言葉を一つ一つ書き留めながら生きていくしかない」と話した。

 吉増さんは、宮城県で津波被害を受けた大学生の体験談をはじめ、被災地と自身の詩作との関連や、昨年2カ月間滞在した石巻市で制作した映像作品などについて語った。「独自の物差し、触れ方などをその都度発見していかないといけない」と述べた。

© 株式会社神奈川新聞社