新型コロナウイルス感染症への対応を法制度面から解説

TOKYO MX(地上波9ch)朝のニュース生番組「モーニングCROSS」(毎週月~金曜7:00~)。2月19日(水)放送の「オピニオンCROSS neo」のコーナーでは、弁護士ドットコムGMで弁護士の田上嘉一さんが感染症の“危機管理体制”について解説しました。

◆新型コロナウイルスへの対策は?

新型コロナウイルス感染症への対応について、政府は2月16日に初めて開いた専門家会議の議論を踏まえ、感染経路が辿れない患者が国内各地で出ることを前提とした対策に舵を切りました。加藤勝信厚生労働大臣は、「これから考えないといけないのは、重症化や死亡する事例を出さないことだ」と話しました。

まず田上さんは、感染症法による感染症の分類を紹介。重篤性と感染力について、「エボラ出血熱、ペスト、天然痘などが分類されている一類感染症は、一番早く感染し、且つ、死に至る危険性が高い」と説明。以降、結核、MERS、SARS、鳥インフルエンザ(H5N1)などが分類されているニ類感染症、コレラ、腸チフス、赤痢などが分類されている三類感染症と続きます。

新型コロナウイルスによる感染症が、感染症法に基づく「指定感染症」になると、健康診断(感染症法17条)、就業制限(同18条)、入院(同19条)、その他の措置などを勧告することが可能に。「相手が拒否した場合、ある程度強制することができ、今回、(新型肺炎に)感染していなくても陽性の疑いがある人に関しても、これらの条文が適用できる」と解説します。

◆検疫法と感染症法の違い

そして、田上さんは「いろいろと調べるなかで、問題があるなと感じた」と前置き、「検疫法と感染症法が二重体制になっている」と指摘。

検疫法は、国内に常在しない感染症が国内に入るのを防ぐことを目的とした、いわゆる水際対策。その対応主体は、厚生労働省や検疫所です。対して感染症法は、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療を目的とし、対応主体は国から都道府県、保健所、各地域の医療機関へと降りていきます。

田上さんによると、2009年に新型インフルエンザが流行した際、空港内で防護服を着用し対応していたのは検疫所の職員で、2014年にデング熱が流行したときに代々木公園で蚊の処理にあたっていたのは都職員だったそう。

こうした事例を挙げ、「これが役所の縦割りというところ。"どっちがやるの?”というエアポケットが起きるなど、危惧されている。災害、他国からの武力攻撃、そして感染症といった有事法制に対して、日本は内閣危機管理監を置いているが、統合調整して情報を1ヵ所に集約し、そこから指令を出し、一気に動かすという部分が弱い」とウィークポイントを指摘。

◆「FEMAのような組織を」

また、新型コロナウイルスへの対応を見ていて、仕組みがまだ整っていないと感じてしまうと田上さん。「内閣の官邸にかなり集約してきてはいる。とはいえ、今回自衛隊の人たちが出ているが、彼らは感染症の専門家ではない。災害や感染症などに関してはFEMA(アメリカ合衆国連邦緊急事態管理庁)のような(国主導の専門的な)組織を作って対応する、ということを真剣に検討したほうが良い」と主張していました。

MCの堀潤は、「今、一番心配なのは各地域で医療機関の方の感染も言われるようになってきたこと。街中の診療所や少し規模の大きな病院で、もし感染が拡大して『入れません』『機能を停止します』というところが増えると、それこそ中国・武漢市のような医療崩壊の状況を生み出しかねない」と危惧。だからこそ、「地域のお医者さんたちを守るような対策もしっかりと取ってほしい」と述べていました。

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<番組概要>
番組名:モーニングCROSS
放送日時:毎週月~金曜 7:00~7:59 「エムキャス」でも同時配信
レギュラー出演者:堀潤、宮瀬茉祐子
番組Webサイト:https://s.mxtv.jp/morning_cross/
番組Twitter:@morning_cross

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