【解説】対馬市長・比田勝氏再選 地方再生 問われる手腕

 1日投開票された対馬市長選は、政策論争が盛り上がりに欠く中、比田勝市政の「継続」が決まった。
 告示1カ月前に出馬表明した新人候補は、動画配信サイトに遊説動画を投稿するなどネットも駆使。高レベル放射性廃棄物の地層処分施設誘致による経済活性化を目指すと持論を展開したが、2007年に誘致反対を市議会が決議した対馬で有権者の反応は鈍く、争点らしい争点がないまま投開票日を迎えた。
 結果は大方の予想どおり、現職の圧勝だった。「信任を得た」ととらえる向きが強いが、有権者の間には「前回の選挙公約に示されていた(旧対馬いづはら)病院跡の利活用は進んでおらず、総括がなされていない」「(中心部の)厳原に偏った政策をしているように思える。地域をまんべんなく見てほしい」などの不満、批判もある。対馬にゆかりも、組織などの足掛かりもない新人に一定の得票を許したのは、有権者のこうした不満、対馬が直面するさまざまな課題への不安の裏返しともとれる。
 04年3月の旧6町合併時から16年間で、対馬の人口は1万人以上減少し、約3万人。高齢化率は今後、現在の約37%からさらに上昇し、近い将来、2人に1人が高齢者の島になると推計されている。こうした厳しい現実にどう向き合い、地方再生を図っていくか。行政、市民、議会の「ワンチーム」を掲げる比田勝氏の手腕が問われる。

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