住林・光吉次期社長、非住宅や工務店支援に意欲

住友林業(東京都千代田区)は3月2日、4月1日付で代表取締役会長に就任する市川晃社長と、同日付で社長に就任する光吉敏郎・取締役専務執行役員 住宅・建築事業本部長が出席し、同社本社で記者会見を行った。次期社長となる光吉専務は非住宅など新分野の開拓の他、工務店支援や連携などを語った。

市川社長は光吉専務について「国際感覚とバランス感覚に優れ、非常にフェアで社内外の信頼も厚く、どんな局面においても冷静で粘り強く、これからの時代の変化に対応してもらえる人物だ。1月に社長就任を打診し快諾してもらった」と評した。光吉専務は住友林業の1948年の株式会社化から8代目社長となる。「市川社長からのバトンタッチは1992年に初の海外駐在で米国・シアトルに赴いた時以来、実は2度目となる。当時は国内住宅着工数が150万戸を超え、海外からの木材輸入が多く、加工業がにぎわっていた時代だった」と振り返った。

そして「時代と環境が変わる中、今回のバトンは当時に比べて非常に重い。公正・信用を重んじ、社会を利するという『住友の事業精神』をよりどころに、人と地球環境に優しい木を生かし、持続可能な豊かな社会を目指す住友林業の経営理念の実践を行っていく」とした。

国内の事業環境について光吉専務は、1980年代に94万人いた大工が現在は30万人、2030年には20万人にまで減るといわれている環境に触れ、「人手不足が深刻化している。木造住宅はさらなるプレカット化やIoT(モノのインターネット)活用など、合理化のための改革を進める」とした。また住宅の60%が木造なのに対し、非住宅分野は9%程度にとどまっているとしたうえで、「保育園や高齢者住宅などは低層から4階建てくらいまでは木造振興政策もあり、木造化は進みつつある。今後は規制やコストの問題をクリアし、木造建築の高層化も進めていく。技術開発に注力し、単独のみならず、デベロッパーやゼネコンとも組んでいきたい」と述べた。

また光吉専務は住宅事業について「人口は減っているが、リフォーム適齢期の64歳以上が4000万人程度で推移していくし、相続が今後増えていく。減築リフォームや平屋への建て替え、通常の賃貸住宅以外でもサービス付き高齢者向け住宅といった新たな土地活用も考えられる。ネガティブにならなくていい」と述べ、新需要の掘り起こしに意欲を見せた。

工務店との関係について光吉専務は「(家づくりなど工務店支援事業である)イノス事業をはじめ、全国の建材店とも取引をしているが、着工戸数の減少や人手不足といった課題を工務店など取引先も抱えている」と現状を分析。工務店には新たにCAD作成などでの支援事業を立ち上げていることにも触れ、「木材・建材の流通でも競争力を上げていくなど、手を携えて工務店と歩んでいきたい」とした。

海外事業については市川社長、光吉専務が説明した。北米や豪州での木造住宅販売や東南アジアでのRC造の集合住宅開発に注力。北米では賃貸住宅事業や都市開発も行っていく。東南アジアでは日本向けに出荷していた木質製品の地元・海外販売も進めていく。

新型コロナウイルスの影響については市川社長が「住宅設備の納期の遅れもあり、引き渡しの遅れは出てくるだろうが、工事進行基準を採用していることもあり、今期(2020年3月期)決算への影響はあまりない」とした。今後については「展示場来場者数が2月は10%以上の減少があった。3月も影響はあるだろう。しかし閉鎖している展示場はない」と説明。営業活動と次期への影響も大きくは心配していない旨を説明した。

市川社長(左)と次期社長の光吉専務

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