『星屑の町』 昭和感たっぷりの音楽人情劇

(C)2020「星屑の町」フィルムパートナーズ

 劇作家で演出家の水谷龍二とコント赤信号のラサール石井&小宮孝泰が1994年に結成した演劇集団「星屑の会」。その25年間に7作品が上演された舞台劇シリーズの映画化だ。主人公は売れないムード歌謡コーラスグループのおじさん6人で、今回の映画ではヒロイン役にのんを迎え、グループに歌手志望の女の子が加入したことでまさかの大ブレーク!?という大騒動が描かれる。

 売れないしコーラスも下手という設定だけに、コメディアンや俳優がプロの歌手を演じている違和感は微塵もないばかりか、6人が常に力の抜けた人情喜劇のような味わいを醸し出しているのは、舞台7作で培ったチームワークによるものだろう。その上で、ドサ回りの歌手を演じる戸田恵子の見事な歌唱力に魅了される。のんだって十分に頑張っているけれど、ここにはやはり歌手に必要なのは歌唱力よりもアイドル性や若さだという皮肉が込められているように思う。

 監督は、『の・ようなもの のようなもの』の杉山泰一。重要な出来事は必ず「ステージ上」「舞台裏」「スナック」のいずれかで起きる舞台劇が原作らしい構成なのだが、映画化だからといってヘンに奇をてらわなかったことが、逆に映画的な“繰り返し”が生む安定感=心地よさにつながっている。また、コミカルな中に自転車やブランコなどを使って詩情をまぶす小技もうまい。安心して観られる昭和感たっぷりの音楽人情劇だ。★★★☆☆(外山真也)

監督:杉山泰一

原作・脚本:水谷龍二

出演:大平サブロー、ラサール石井、小宮孝泰、渡辺哲、でんでん、有薗芳記、のん

3月6日(金)から全国公開

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