レネー・ゼルウィガーが、今年のアカデミー賞で主演オスカーを獲得した伝記映画だ。『オズの魔法使』『スタア誕生』などで知られるハリウッドの伝説的な女優ジュディ・ガーランドの最後の日々を演じている。主演ノミネートは実に17年ぶりで、『ブリジット・ジョーンズの日記』や『シカゴ』でトップ女優に上り詰めながら、近年は停滞気味だった彼女の復活がうれしい。
アネット・ベニングがグロリア・グレアムを演じ、ちょうど1年前に日本公開された『リヴァプール、最後の恋』を思い出した。あの作品もかつての大物女優の最期にスポットを当て、年の離れた若い恋人との関係を描いていたから。しかも演じる二人には、声がチャーミングという共通の魅力がある。
だからあえて比較すると、女優としてはガーランドの方が大物だし、向こうは恋愛面に特化していただけに、ハリウッドの内幕、暗部を浮かび上がらせることで#Me Too運動などに通じる現代性という点では本作に分がある。しかもガーランドは一流の歌手で、やはり歌の力は絶大なので、クライマックスへ向けて盛り上がるのだ。その上、監督の力量やギミックが見劣りする分、純粋にレネーの演技力が楽しめる。全ての歌を自ら歌いこなしつつも、ガーランドに成り切ったレネーはよりフェミニンで、やさぐれ感の中から色気が匂い立つ。本作はまさに、彼女の圧巻のパフォーマンスを観るための映画なのだ。★★★☆☆(外山真也)
監督:ルパート・グールド
出演:レネー・ゼルウィガー
3月6日(金)から全国公開