対馬市長選で再選した 比田勝尚喜さん(65) 強い観光産業築く

比田勝尚喜さん

 〈1日に投開票された対馬市長選で新人候補との一騎打ちを制し、再選を果たした。人口減少や地域経済浮揚策などの難題が山積している「国境の島」を、どう再生へと導くのか。2期目への決意などを聞いた〉

 -選挙戦を通し、何を感じたか。
 (多くの有権者と接し)基幹産業である漁業の不振や、韓国人観光客の激減で市民が将来に不安を抱えていることをあらためて肌で感じた。人口減少対策と産業活性化に特に力を入れていく必要がある。

 -新人候補は、観光依存の経済からの脱却を訴え、高レベル放射性廃棄物の地層最終処分施設誘致と、それに伴う国の交付金獲得を訴えた。
 調査段階でも風評被害が懸念され、実施されると子孫の代まで大きな負担を与えてしまう。2007年の市議会でも誘致反対の決議がなされており、今回あらためて「誘致にノ-」の民意が示されたと考えている。対馬の漁業の生産額は年間150億円規模。年間10~20億円の交付金ではとても風評被害額を補えない。

 -産業活性化に向けた重点施策は。
 対馬の観光と農林水産を「食」の面でマッチングさせることが必要不可欠だと考えている。対馬には漁獲量日本一のアナゴなど、魅力的な食材がある。島内で対馬の食を楽しむことができるよう、流通体制の改善を図りたい。国内外から幅広く誘客し、国際関係に左右されない足腰の強い観光産業を構築したい。

 -人口減少対策をどう進めるか。
 対馬では、中学卒業生の3割近くが本土の高校に進学する。著名なスポーツ指導者らを市の嘱託職員として採用し、島内の高校に派遣することで、若者定着と併せ、島外からも入学希望者を集めることができればと構想している。

 -耐震性の不足が判明した市役所本庁舎への対応は。
 本庁舎問題は04年の旧6町合併時からの課題だが、議会をはじめ市民も参画する検討会を2期目の任期中に設置し、補強するのか、新たな場所に建設するのかの方向性を出したい。この4年間で工事に入るのは資金計画の面でも難しいかもしれないが、これは避けて通れない問題だ。

 -あらためて2期目の決意を。
 「この島に生まれて良かった、住んで良かった」と思ってもらえるよう、継続して政策を進めていきたい。(聞き手は対馬支局・緒方秀一郎)

 【略歴】ひたかつ・なおき 旧上対馬町大増出身。1977年から2013年まで同町役場や対馬市役所に勤務。13年から15年まで同市副市長。趣味は剣道で、教士7段の腕前。座右の銘は「為(な)せば成る」。

© 株式会社長崎新聞社