IDC、国内ユーザー企業のAI活用は限定的導入/標準基盤化に留まっていると発表

IDC Japan株式会社では、AIについて、自然言語処理と言語解析を使用して質問に応答し、機械学習をベースとしたリコメンデーションとディレクションを提供することで、人間の意思決定を補助/拡張する技術として定義している。AIの成長は各分野でみられており、国内ユーザー企業のデジタルトランスフォーメーション(以下、DX)への取り組みを促進するきっかけとなっている。AIによる洞察は、DXの目的である内部エコシステムの変革と、顧客エクスペリエンスの変革による新しい価値の創出に必要不可欠で、DXの重要なコアテクノロジーの1つとなっている。したがって、国内ユーザー企業がAIを活用して事業を優位に推進するために、IDCではAI活用をビジョン、人材、プロセス、テクノロジー、データレディネス(対応力)の5つの特性に分類し、AI活用の成熟度を各特性でどのような段階を経て高めていくかについて十分な認識を持つ必要があると考えている。そこでIDCでは、AI活用の成熟度を客観的に判断する指標をユーザー企業に提供するために「IDC MaturityScape:Artificial Intelligence 1.0」のモデルを開発し、国内ユーザー企業を対象に定量的にAI活用の成熟度を分析した「IDC MaturityScape Benchmark: Artificial Intelligence in Japan, 2020」を発表した。これは、2019年11月に行われた、国内の従業員数500人以上のユーザー企業でAIシステム(以下、AI)を保有し、AI導入の方針決定に影響力のある回答者を対象とした調査を、AI活用の取り組みに関する成熟度ステージを定量的に評価、分析を行ったものだ。IDCでは、AIの成熟度について、以下の5つのステージで評価している。

  • ステージ1:個人依存(Ad Hoc)
  • ステージ2:限定的導入(Opportunistic)
  • ステージ3:標準基盤化(Repeatable)
  • ステージ4:定量的管理(Managed)
  • ステージ5:継続的革新(Optimized)

そして今回の調査によって国内ユーザー企業はステージ1が7.5%、ステージ2が37.9%、ステージ3が47.0%、ステージ4が7.4%、ステージ5が0.2%という結果になった(トップ画像参照)。国内ユーザー企業の多くがステージ3かそれ以前のステージ2に留まっており、ステージ4以上の先駆的なAI導入企業はわずかであることがわかった。また、事業計画とAIの導入戦略を一体化し、ビジネス価値を得始めているリーダー企業と、そうでないフォロワー企業の差が明確に表れ、リーダー企業はフォロワー企業と比較して成熟度ステージが高くなっている。

IDC Japanソフトウェア&セキュリティグループのリサーチマネージャーである飯坂 暢子氏は「AIはDXを実現する注力テクノロジーとして日常社会のあらゆる側面に浸透する。企業はAIの能力をいかに適正かつ優位に行使するかによって組織内外のエンゲージメントを促進し、イノベーションを加速することができる。企業はMaturityScapeを利用し自社と競合企業の成熟度を比較、ギャップを明らかにし、自社のAI導入戦略の再評価/改善/実行を繰り返し行うべきである」と分析した。

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