過去にない暖冬

©株式会社長崎新聞社

 その月を過ぎてしまったが、石垣りんさんに「二月のあかり」という詩がある。〈二月には/土の中にあかりがともる〉〈草の芽や/球根たちが出発する/その用意をして上げるために〉。明かりとは、春の兆しを言うのだろう▲凍土にほのかな明かりがともる。冬の厳しさがあってこそ、春の息吹が心地よく、ほの温かいはずだが、このところ季節の移ろいをどうも肌身に感じにくい。この冬(昨年12月~今年2月)は過去にない暖冬だった▲福岡管区気象台によると、この冬の平均気温は五島市(福江)で10.4度、長崎市で10.0度、佐世保市で9.7度などと、統計が始まって以降、どこも皆、最も高かったという▲日本付近の偏西風が例年よりも北へ流れ、九州北部に寒気がほとんど流れ込まなかったことなどが原因で、気象台は「地球温暖化の影響も考えられる」としている▲近年、夏になれば「各地の気温、過去最高」の報に触れ、行く末が案じられる。冬もまた、かつてない暖かさだったと知れば、底冷えがないありがたさに浸ってばかりもいられない▲土に春の明かりはともらなかったらしい。それでも花らんまんの季節が近づいている。新型肺炎の拡散でとかく気の重い昨今、心を和ませられるといい。花が咲く、の「咲」には「わらう」の意味もある。(徹)