燃料不足の衛星を救う「MEV-1」が通信放送衛星とのドッキングに成功

インテルサット901(奥、金色)にドッキングしたMEV-1(手前、銀色)の想像図。ノースロップ・グラマンが公開している動画より(Credit: Northrop Grumman)

ノースロップ・グラマンは2月26日、昨年2019年10月に打ち上げられた人工衛星「MEV-1」が、インテルサットの通信放送衛星「インテルサット901」とドッキングすることに成功したと発表しました。MEV-1は今後5年間に渡って結合状態を維持し、燃料が不足しているインテルサット901に代わり軌道を維持し続けることになります。

■燃料さえあればまだ使える衛星に寿命延長サービスを提供

MEV-1によって80m離れた位置から撮影されたインテルサット901(Credit: Northrop Grumman)

インテルサット901は2001年6月に打ち上げられた人工衛星で、大西洋上空の静止軌道でサービスを提供してきました。通信放送衛星としての機能に問題はないものの、20年近い運用によって、軌道を維持するための燃料が不足しています。MEV-1は、このような「燃料さえあれば使える衛星」の寿命を延ばすために作られた衛星です。

2020年2月25日、MEV-1は静止軌道よりも300kmほど高い軌道に移されていたインテルサット901に接近し、ドッキングに成功しました。2つの商用衛星が軌道上でドッキングするのは、これが初めてのこととなります。

MEV-1は独自のスラスターを備えており、燃料不足のインテルサット901に代わって軌道を維持し続けます。ドッキング機構は再使用が可能で、MEV-1自体の運用期間は15年。インテルサット901には5年間の寿命延長サービスを提供しますが、提供終了後はまた別の衛星とドッキングして、同様のサービスを提供することが可能です。

スラスターを備えた衛星(宇宙船)が別の衛星などにドッキングしてその軌道を維持するという運用は、地球低軌道ではすでに実績があります。たとえば高度約400kmの軌道を周回する国際宇宙ステーション(ISS)の場合、わずかな大気との抵抗によって徐々に高度が下がってしまうため、現在では補給船のスラスターを使ったリブースト(軌道上昇)が行われています。

いっぽう、静止軌道上の衛星に対する寿命延長サービスの提供は、今回のMEV-1が初めてとなります。ドッキングに成功したMEV-1とインテルサット901は、3月下旬から静止軌道へと移動する予定です。

MEV-1のドッキング機構がインテルサット901のスラスターをつかまえた様子(Credit: Northrop Grumman)

Image Credit: Northrop Grumman
Source: Northrop Grumman
文/松村武宏

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