株価下落にどう対応すればいい?投資家は焦らず基本へ立ち返ろう

2月の最終週は月曜が祝日だったため、25日(火曜日)~28日(金曜日)の4営業日でしたが、その4日間で日経平均株価は2,244円(-9.59%)も下落しました。株価の大幅下落は日本だけではなく、米国のNYダウは-12.36%、ドイツのDAX指数も-12.44%と大幅に下落し、世界同時株安となりました。この背景には新型コロナウィルスの感染拡大に対する不安があるのですが、依然として特効薬もなく不透明感が残っています。しかし、株価下落に狼狽するのではなく、しっかりと投資の基本に立ち返りましょう。


株価変動時こそノイズは排除しよう

今回の株価下落を受けて、SNS上では「保有していた株を損切りした」や「積み立てしていた投資分をやめてしまった」などの声も見られました。この先どうなるかは誰にもわからないので、どのような投資行動が正しいとは言えません。これらの声に対して正しいとか間違っているとか他人が言うのは野暮なのですが、私が言えるのはノイズを排除する方がよいということです。

ノイズとは何か。それは他人から発信される情報です。これにはニュースサイトの情報も含みます。たとえば、このような急落時には個人から発信される情報はポジショントークになりがちです。そして、バランス感覚に欠けた偏った情報になることも多くあります。上がって欲しい人もいれば、下がって欲しい人もいるわけですから、全ての情報を真に受けていると何が何だかわからなくなるでしょう。

それなら、ニュースサイトなら信頼できるのではないかと思う人もいるかもしれませんが、参考にするのは発表された経済指標や、市場のデータ程度です。解説記事はあまり参考にしません。なぜなら、ニュースサイトには記事を作るうえでの制約があるからです。

制約とは何か。限られた時間の中で解説を書かなくてはいけなかったり、書いている間にも状況は変化していきます。相場の動きの要因は複数あり、それを明確に書き出すことは不可能ですが、制約の下、適当な解説記事も多発します。

たとえば、直近でいえば新型コロナウィルスの件で相場が円安に動いた際に「感染拡大で日本売り」と報じたサイトが、翌日円高に相場が動くと「安全資産として日本円に買いが集まる」と報じていました。筆者も記事を書いたりコメントをする立場なので、この記者の気持ちはわかりますが、毎日何かしらの解説記事を書こうとすると、こうなってしまうのです。

一度決めた投資方針を守れているか?

投資に絶対はないですが、適当に投資をするとかなり高い確率で痛い目を見ます。これは筆者の体験談でもあります。重要になってくるのが投資方針なのですが、相場のボラティリティ(変動率)が高まると、投資方針を守れなくなる人が増えます。

たとえば、毎月月末に給与の5%を積み立てていくという投資方針を立てたとしましょう。そうであれば、日経平均が1週間で10%近く下落しようが関係のないことなのですが、このような急落局面が来ると前述の様に積み立てをやめてしまったり、チャンスだと思って通常よりも積立投資の額を増やしたりすることが多発します。これは投資方針を守れていないのです。

絶対に投資方針を変えてはいけないということではありません。想定しない市場環境の変化が生じれば、柔軟に投資方針を変える必要はあるでしょう。しかし、ほとんどの場合は変える必要のない一時的な相場変動に過ぎないのです。

米国のアドバイザーから教わったこと。

いまから5年ほど前に筆者はボストンでFP(ファイナンシャルプランナー)やIFA(独立系ファイナンシャル・アドバイザー)と話をする機会がありました。彼らは歴史ある事務所を経営していて、3世代に渡って顧客と付き合っていました。3世代であれば既に数十年も資産運用のパートナーとして付き合っていることになります。

米国の株式市場は、この数十年の間に何度も大きな株価の下落局面を迎えています。ITバブルの崩壊、リーマンショック、チャイナショック、欧州債務危機、VIXショックなど、数えきれないほどのイベントが起きました。

どのタイミングでも顧客が離れてしまいそうなのに、どのようにして乗り切ったのかを聞いたところ、顧客にはインデックス・ファンドを積立投資させているので、S&P500の長期チャートを見せながら、「いまは相場を見なくていい」と言い、長期投資の基本的な考え方を何度も伝えるそうです。

上図はS&P500の長期チャートですが、下落している期間もあるものの、1985年から直近までの約35年という長い目で見れば右肩上がりではあります。1週間で大きく株価が急落すると、「今日はいくら下がった」や「1週間でいくら下がった」などと短期的な見方をしがちですが、そもそも資産形成をするうえでは投資は長期が大前提になります。しっかりと基礎に立ち返り、過度に不安になるのはやめましょう。

自分のストーリーを大事にしよう

今回の新型コロナウィルスを背景とした株価急落局面に対して、筆者は2月27日の早朝のラジオ番組で、「株価が一方的に下落し続けるとは思わず、週末に悪材料が出ない限りは週明けから一度反発して、その後は踊り場になるだろう」と話しました。結果としてはその通りになっていますが、これは自分の中のストーリーを共有しただけであって、相場の様子を見ながら日々変えているようなものではありません。

このようなストーリーを持っていたので、その後2日間は続落しましたが全く不安になることはありませんでした。今後も暫くは株式市場では値動きが激しくなると思いますが、日々の株価の変動に狼狽するのではなく、自分のストーリーを大事にしながら、投資方針をブラさないという長期投資の基礎に立ち返りましょう。

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