「私さえ我慢すれば」 望まない性交 抵抗困難の構図 

性暴力と、性犯罪に対する司法判断に抗議する「フラワーデモ」でプラカードや生花を手にする参加者=2019年12月、横浜駅西口

 「望まない性交」とはどういう状況下で起きるのか―。大学研究者や性暴力被害者団体などでつくる研究チームは発生過程を調査している。2019年5月の中間報告では、被害者の多くが加害者との上下関係などから抵抗できない状況に追い込まれていたことが分かった。

 浮かび上がったのは「被害者が社会的に抗拒不能にされる」という構図だ。「抗拒不能」とは、身体的または心理的に抵抗することが著しく困難な状態を指す。社会的抗拒不能な状況では、加害者は、経営者と従業員、先輩と後輩、教師と生徒・児童、夫と妻、親と子など、あらゆる場にある「上下関係」を利用し、不平等、非対等な人間関係性を巧みにつくり出すという。

 この場合、加害者と被害者は同じコミュニティーに属していることが多いため、被害者は非常に抵抗しづらい状況に陥る。研究チームは「被害者は周囲の人間関係までも考慮した上で『性的強要にどう反応するか』と考えなければならない」と指摘する。

 勤めていた会社の経営者から繰り返しハラスメントを受け、望まない性交を強いられた女性は「要職には社長の親族が就き、相談は難しかった。家族を養うために仕事を辞めるわけにもいかず『私さえ我慢すれば』と考えるようになってしまった」と話す。

 調査では、被害者が性暴力の被害を受けたと自覚するのに、長いときは10年以上もの時間を要することも分かったといい、研究チームは「『何年たっても相談にきていいよ』という性暴力被害の相談先が必要。不同意性交を性暴力として社会が認識していくことも大切」と強調する。

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