「金メダル」公言にためらいなし 競泳ニッポンのエース・瀬戸大也 東京は「自分の五輪」に

競泳のコナミオープンで力泳する瀬戸=2月

 競泳ニッポンをエースとして引っ張る瀬戸大也(ANA)に五輪金メダルへの思いを聞いた。(聞き手、共同通信=菊浦佑介)

 ―東京五輪は刻々と近づいている。

 「年が明けて五輪色ばんばんという感じだが、周りほど自分は盛り上がっていない。淡々と、という気持ちの方が強い。もちろんわくわくしているが、このままいけば普通に五輪が来て、普通にレースをして、地力を出せると思う。とにかく自信があるので、今のところいい意味で緊張感がない。このまましっかりトレーニングを積めば『自分の五輪』にできると思う」

 ―地に足がついているのは、今までと少し違う印象だ。

 「自分の中でもすごく変わったな、という感じがする。前回は、同じように本番の1年前に五輪代表に決まって、ちやほやされているのが心地よく感じる自分もいた。でもそれはまだまだ二流、三流。今は自分が目指す一流に向かっている感じがする。今のところはライバルより半歩、前に出ていると思うので、これを1歩、1・5歩くらいにして、敵なしで周りを気にせず自分だけに集中してレースをしたい。考え方が落ち着いていて、自分でないような気持ち悪さもあるが、うれしい感覚もある。『自信があるんだろうなあ』と、ちょっと冷めた感じで自分を客観的に見ている感覚」

 ―目標は金メダル、と常々口にしている。

 「公言することにためらいはない。あまり意識しすぎず、自分の持っている力を出すことだけに本番は集中したいので、それに向けていい練習をして自分に自信を付けて、波に乗っていきたい。『金メダルを取る』と発言はしているが、一番の目標は、今までで最高のパフォーマンスをすること。そこだけに集中して、あとは何も考えずにいきたいと思っている」

リオデジャネイロ五輪競泳男子400メートル個人メドレーで優勝し笑顔でメダルを掲げる萩野(右)と3位の瀬戸=16年8月

―五輪の金メダルに触ったことはあるか。

 「ない。(萩野)公介のもの(2016年リオデジャネイロ五輪)は見たけど、触っていないし、あまり見なかった。悔しい気持ちもあったし、自分で取りたかったという気持ちが強かったので。当時は『4年後は絶対、自分であれを掛ける』と思った。世界選手権の金メダルは家にあるが、全く見ていない。むしろ一番見ているのは(リオ)五輪の銅メダル。よく手に取っている。あの悔しさがこみ上げてきて、次は『金』を取りたいという気持ちが湧いてくる。やはり五輪の金メダルは特別。その目標を達成したい。達成したときに見える景色が楽しみ」

 ―リオ五輪の悔しさから出発した東京五輪への4年間。金メダルへの思いがぶれそうになったことや、頂点を目指す苦しさを感じたことは。

 「練習がきついくらいで、メンタル的に苦しいというのはあまりなかった。リオ五輪の後にすぐアクセル全開でスタートして、周りからも『大丈夫か』と心配されたが、意外とここまで持った。特に18年あたりは絶対へこたれてがくんと落ちるだろうな、と思っていた。でも前半から攻めるテーマをぶらさずにやったら、意外とうまく消化できた。フルスロットルで走り始めたが、うまく過ごせたのではないかと思っている。五輪まで残りわずかだが、ここまで来たからあとはもう大丈夫だろう、という気持ち」

世界選手権の男子400メートル個人メドレーで優勝し表彰を受けた瀬戸(中央)、2位のリザーランド(左)、3位のクレアバート(右)=19年7月、光州(共同)

 ―競泳選手としては小柄。金メダルを取ることで伝えたいことは。

 「確かに体格は恵まれていない。スポーツは得意だけど、競泳に関する才能は(萩野)公介とかの方が絶対に自分より持っていると思う。その中でも、努力や強い気持ちでここまで世界で戦えるということは少しずつ証明できている。(昨年の)世界選手権で金メダルを取ったときも、表彰式で真ん中の自分だけぺこっとへこんでいるのが、逆に誇りに感じた。日本人でも、身長が低くても、勝負できている。身長の伸びが止まったときはコンプレックスだったし、気にしていたが、今ではこの体だからこそタフな泳ぎができたり、細かい技術を突き詰められたり、できると思っている。もう全然コンプレックスではない」

 ―テクニックを追求してきた。

 「こだわってやってきている。トップ選手の泳ぎをまねして、自分に変換して泳いできたというところはある。日本人でも個人メドレーで戦えるし、子どもたちに夢を見せ続けたい。自分の後に続くジュニアのスイマーたちも出てきてほしいと思っている。五輪2大会連続で、日本人が2人メダルを取れば、子どもたちにとってもかなり勇気になると思う。400メートル個人メドレーはもう、任せてくれという感じ。200メートル個人メドレーは、チャレンジ。まだ伸びると思うので、狙っていくというよりは、挑戦していく気持ちでやっている」

リオデジャネイロ五輪競泳男子400メートル個人メドレーの表彰式で掲げられた2枚の日の丸=16年8月

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