「病院の治しかた」医療ドラマ乱立の中、小泉孝太郎が明かした思い 「この作品は成功するんじゃないかなという自信はありましたね」

「病院の治しかた」医療ドラマ乱立の中、小泉孝太郎が明かした思い 「この作品は成功するんじゃないかなという自信はありましたね」

小泉孝太郎さん演じる病院の院長・有原修平が、医療界の常識を覆す方法で病院再建に奮闘するドラマ「病院の治しかた~ドクター有原の挑戦~」(テレビ東京系)。スピードスケートの小平奈緒選手が所属する長野県にある相澤病院が、多額の借金を抱えていた倒産危機から奇跡の復活を遂げた実話をベースにした物語です。たくさんの医療ドラマが乱立する中、病院そのものの再建という新しい切り口で展開される本作ですが、“暴走特急”と呼ばれる修平が地方ならではのしがらみや既得権益をものともせず、さまざまな改革を起こしていくさまの爽快さが話題となっています。

今回は、そんな修平を演じる小泉さんを直撃! 実在する人物をモデルにした役を演じる上での苦労や、修平の右腕である倉嶋亮介役の高嶋政伸さんとの感動エピソード、そして気になる最終回の見どころなどを明かしてくれました。

──「面白い」と視聴者の方からの評価が高いですね。

「いやぁ、うれしいですね。作品の主演としては、視聴率はもちろん、皆さんの反応が毎回プレッシャーなので。でも、ありがたいことに『面白い、見応えがある』と評判が良いのは僕も肌で感じています」

──看護師補充に奔走したり、地域に根づく開業医との関係作りなど、毎回起こる問題がリアルなんですよね。

「実際にあったことですからね。さらに、経費削減などの問題自体はどんな業界の会社でも取り組まないといけないことなので、病院関係者の方はもちろんですけど、そうではない方も自分の会社に置き換えて見られると思います」

──次から次に問題が出てきますが、それを想像もつかない方法で解決していく修平の発想力と行動力がとても魅力的です。小泉さん自身は、そういった修平を演じてどう感じていますか?

「相澤孝夫さんという実在の方を演じるわけですから、とにかくプレッシャーでしたよ。時代劇などであれば、少し誇張したりできますけどね。相澤さん含め医療に携わる人たちに失礼がないように…というのが大前提としてありました。また、撮影が始まる前に全話の台本が完成していたので、役作りがしやすくてありがたかったです。最初に意識したのは、修平のキャッチコピーである“暴走特急”という部分で。いかにも“ザ・体育会系”の熱血漢というイメージでした。ただ、実際に相澤先生にお会いした時にとてもナチュラルな方だったので、それは引き継がなければといけないと感じましたね。『ナチュラルなんだけど、言うことがぶっ飛んでいるな』という(笑)」

──作中の修平は、笑顔でズバッと意見を言ってきますもんね。

「熱を持って言うところは言いますけど、そこのナチュラルさというのは大事にしましたね。例えば、炎の色も、目に見える熱そうな部分って外側の赤い色じゃないですか? でも、実は内側の青い炎の方が温度も高くて見えにくい。その青い炎を意識しましたね。“ザ・体育会系”の熱血漢はイメージとしては赤の炎ですが、修平は青の炎だなと」

──静かな炎でメラメラと燃えているイメージですね。

「そうなんです! そこは大事にしつつも、周りを置き去りにしていくタイプ(笑)。相澤先生のすごさは、自分が苦しい時でも、患者さんや地域医療のために動くという思いが常にあるところだと思うんです。『これをやっちゃえば状態は良くなるんですよ。なぜみんな躊躇(ちゅうちょ)するんですか?』とサッと行動に移せるんですよね。だから、今回は熱量を持ちつつ、力が入りそうなところでそこまで入れないというのを意識して…」

──演じるのは結構難しかったんじゃないですか?

「“こういう役だ”と決めつけなくて良かったなと。あと、『自分だったらこう言うだろうな』とも考えながら役作りをしていきました」

──小泉さんの要素もプラスされた修平なわけですね。

「そうですね。最終話で『有原修平はこういう人なんだな』というのが確立できればいいなと。あとは、倉嶋亮介役の高嶋政伸さんをはじめキャストやスタッフ一丸となって『病院の治しかた』はこういうドラマなんだと、ハッキリ作り上げられたのも大きいです。今クールは医療ドラマが6本も放送されていますけど、僕が『よし、やってやるぞ!』と力を入れすぎなくても、そこを間違えなければこの作品は成功するんじゃないかなという自信はありましたね。作品が持っている力は本当にすごいなとあらためて感じました」

──「医療ドラマ6本の中で一番面白い」という視聴者の方も多いですよね。毎回、修平がどうやって問題を解決して、次はどこへ向かうんだろうという展開が気になります。

「うれしい! いいドラマはそうなんでしょうね。僕は主役だから話の展開を分かっているはずなのに、実際の放送でも物語に引き込まれて食い入るように見てしまうんですよね。それっていい作品なんですよ。本来だったら、僕と高嶋さんの院長室でのやりとりなんかは一番だれるシーンだから、連ドラとしては大きな賭けなんです。真面目で画替わりもしないし、派手な演出もないんですけど、それをじっと見させる演出を監督がしてくださって。最初は『このシーン、視聴者の人たちは見続けてくれるかな? 飽きちゃうんじゃないかな?』と心配だったんですけど、実際はサラッと見られて、むしろ『どういうことを話しているんだろう?』と気になっていただけるシーンにできたんじゃないかと」

──お二人の掛け合いはもちろんですけど、倉嶋が修平の後押しをしてくれるのか、それとも止めに行くのかが毎回気になります。

「そこは、山本むつみさんの脚本の素晴らしさですよね。あと、僕と高嶋さんのタッグというのもすごく感謝しました。コンビものでいうと、『警視庁ゼロ係~生活安全課なんでも相談室~』シリーズ(同系)では寺田寅三役の松下由樹さんにすごく助けていただき、今回は高嶋さんで。最初の頃は『高嶋さんが絶対僕を裏切るんじゃないか』とみんな言ってましたからね(笑)」

──高嶋さん、悪役のイメージが強いですもんね(笑)。

「そうそうそう! あの事務長、絶対裏切るよって(笑)。でも、今回は最後までめちゃくちゃいい人ですから! 高嶋さんとは今までもさまざまな作品で共演させていただいていますけど、今回は熱量が違いましたね。『孝太郎ちゃん、今回の役うれしいよ!!』って(笑)。『倉嶋もいい人だし、好青年な孝太郎ちゃんとタッグが組める…俺、正直10年ぶりに、事務所で社長とマネジャーみんなでいい役が来たって、ガッツポーズしたんだよ』と話してくださったんですよ」

──めちゃくちゃ喜ばれているじゃないですか!

「記者会見の日にも真っ先に寄ってきてくださって。『1話を見て、こんなにいいんだと驚いた。これは間違いなく、孝太郎ちゃんの代表作になる』と言っていただきました。また、撮影最後のクランクアップの時にも、高嶋さんは自分のシーンの撮影が終わったのに待っていてくださったんです。夜中に熱いメールもいただいたんですよ。『孝太郎ちゃんの代表作となる作品をラストカットまで見届けられて、バレないようにしていたけど、僕、最後は涙が出たんだ。小泉孝太郎さんというすてきな役者さんの代表作でバディを組むことができて、高嶋政伸として幸せです』と…感激しました」

──これ以上ない褒め言葉ですね。

「いい作品というのは、人との縁が大事なんだとあらためて感じました。高嶋さんはもちろん、共演者の方やスタッフの方…やっぱりチームとして素晴らしかったですよね。撮影現場の雰囲気がいいと、映像や芝居にもそのリズムや流れみたいなものが出てくるんだなと。現場はめちゃくちゃ巻きましたから! ドラマの展開も早いけど、現場の展開も早い(笑)」

──でも、院長室での高嶋さんとのシーンは撮影が大変だと言われていましたよね。

「大変でしたね。医療用語や経営者としてのセリフが多かったので」

──覚える時のコツなどはあるのでしょうか?

「人それぞれだと思うんですけど、高嶋さんはすごかったですね! 最初の時点で1~7話までのセリフを全部覚えているんですよ。驚がくでしたね(笑)。僕が現場で2~3話のセリフをブツブツ言っていると『孝太郎ちゃんどこやってるの?』『あ、2話のここです』『じゃあ、ちょっとやろうか』と台本がないのに付き合ってくれるんですよ! そういうタイプの方もいるんだなと…まぁ、高嶋さんクラスの方はめったにいらっしゃらないと思うんですけど(笑)。僕は事前に8割くらい覚えて、あとは現場で調整しながら覚えます。実際にやらせていただいて、高嶋さんがこう来ると僕のリズムが悪くなるから、監督に『セリフの順番を入れ替えてもいいですか?』と相談したり。でも、高嶋さんは逆に『その方法は絶対できない』と言われていましたね。僕も高嶋さんのやり方はできないので、人によって覚え方はさまざまだと思います」

──苦労するポイントも違うんですね。

「今回は本当に専門用語がすごくて。院長室でのシーンを1日中朝から晩まで2話撮って、3話撮って、4話撮って…というやり方だったので、最初は苦しかったですよ。役のキャラクターの方向性や、高嶋さんとの掛け合いのリズムはこれでいいのかなど、いろいろ考えながらやっていたので、久々に1シーンでNGを10連発出しちゃいました。今までだとできた感覚ができなかったり、セリフが出てこなかったりして『あぁ、いかん! これ太刀打ちできない! 家に帰ってもっと頑張らなきゃ』って(笑)」

──大変さが伝わってきます。

「専門用語を覚える作業をもっとしなきゃということで、普段以上にギアを入れましたね。僕は大体、家で寝る直前に台本を見て次の日現場に向かうんですけど、今回は夕方など早めに帰れた時もセリフを覚えていました。具体的には、テレビ、ラジオ、音楽などの雑音が流れている中で覚える作業をします。そうすると、いろんな気になることがあっても、その状況の中で覚えたセリフは抜けにくいんですよね。僕は元々そういうことが得意なんです。学生の時に電車の中で英単語帳を覚えるのが早かったとか、あんな感覚。でも、そういった受験勉強レベルの覚え方でやらないといけないくらい、本当にきつかったですね(笑)」

──修平役を演じるのは気が抜けなかったんですね。

「唯一、奥さんの志保(小西真奈美)とのシーンくらいかな。ホッとするのは(笑)」

──志保とのシーンは見ている方も癒やされます(笑)。それでは最後に、今後、有原総合病院が、そして修平たちがどうなっていくのか…最終回へ向けての見どころを教えてください!

「まずは、あらためてこの病院存続の危機が本当にあった話ということですよね。ずっと修平が大事にしていた、患者さんや地域のためにという医師としての根幹があるからこそ、有原総合病院は絶対につぶせないし、なくせない。でも、ビジネスとしても成り立たせないといけない。だから、苦渋の決断を迫られる。そこで彼は、病院存続のためにどのような決断をするのか。そして、盟友である倉嶋は、どうアドバイスしてくれるのかが最大の見どころだと思います。病院がなくなるかもしれない危機の時の、男2人の友情。この作品で、僕自身、どんな組織も1人のリーダーみたいなカリスマがいたら、名参謀っているんだなと感じたんです。修平がカリスマ医師だとしたら、倉嶋は名参謀なわけですよ。倉嶋がいなかったら、修平は絶対つぶれていたと思う(笑)」

──“暴走特急”ですからね(笑)。倉嶋はもちろんですが、悦子さん(兵藤悦子・浅田美代子)や米田副頭取(米田正光・中村雅俊)にも支えてもらって、最後にはまさかのあの人も駆けつけてくれますもんね。

「今回、生きていく上で大切なこととして僕もあらためて痛感したんですけど、一生懸命生きていると助けてくれる人が必ず現れるんだなと。だから、視聴者の方も、有原修平という1人の医師としての生きざまを他人事じゃなく見ていただけるとうれしいです。終わりはしますけど、ものすごく爽やかですてきな余韻が残る終わり方なので。終わったけど終わっていないような…僕もまだ続いている感じがしますし。実際に相澤先生ご本人と打ち上げの時にお会いしたら、『これまだ“病院の治しかた2”をやろうと思えばありますから!!』と言っていただいたんです。『今度はがん治療のための機械がまたね…』といろいろ説明してくださいました。『まだ戦いがあったんですね!』と。でも、あのセリフの量は苦しいなって(笑)」

──終わらないですね、戦いが。ぜひシーズン2を見たいです!

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