【MLB】加藤豪将、メジャーへの熱き思い芽生えたイチロー氏“生観戦”「可能性が1%でも…」

マーリンズ・加藤豪将【写真:木崎英夫】

ヤンキース傘下からマーリンズ傘下に移籍、OP戦でユーティリティとして奮闘中

 マーリンズとマイナー契約を結び招待選手としてキャンプに参加している加藤豪将内野手が5日(日本時間6日)、陽光が降り注ぐフロリダの地でメジャー初昇格への思いと、今を支える起伏に富んだマイナー時代を振り返った。

 2013年にヤンキースからドラフト2巡目で指名を受けて入団。ピラミッド式になる傘下のマイナー下部組織に属するチームを一歩ずつ登り、昨季はマイナー7年目で3Aに辿り着いた。この日はキャンプインから初めて迎える完全休養日。それでも室内での打ち込みを行うなど、明日への準備を整えた。「バットを振るのが好きなんです」と笑みを浮かべる加藤は、トレーニング前の寛ぎの時間を特別に割いてくれた。

 ここまでオープン戦に9試合出場し、三塁、二塁、一塁に就く「ユーティリティ・プレーヤー」で無失策。打撃では9打数3安打3四球3三振4得点。打率.333。この数字で加藤本人が一番の手応えを感じているのが「四球」だと言う。

「マイナー3Aにはメジャーとマイナーの昇降格を繰り返す投手や、もう一花咲かせて野球人生を締めくくりたいと奮闘するベテラン投手もいます。そういう投手たちとようやく対戦できるようになり、2A時代まではなかった“投手と打者の駆け引き”の空気が流れる中で、見極められている四球は自信になります」

 昨冬に理想と描く、追い求めてきた打撃フォームが固まった。

「去年のヤンキース3Aのフィル・プランティア打撃コーチの家とサンディエゴの僕の実家は徒歩5分なんです。ほぼ毎日のように指導をしてもらい、模索してきた柔軟性を利かせる僕の体に最も合った打撃フォームを固めることができました。オープン戦でヒットに結び付かない打席でも、作り上げたフォームでバットが振れているので気にしてません」

プロ入りか名門UCLA進学か―自分の意志で進路を決定した

 ブレない加藤だが、ここまでの道のりには「地獄」になぞらえる時があった。プロ4年目の2016年、キャンプを終えていざシーズンに入るという時期に所属先を告げられずに居残りでキャンプを過ごす「エクステンデッド・スプリングトレーニング」参加を通達され「生まれて初めて野球が楽しくないと感じた時でした」と胸の内を明かす。

 6歳で野球を始め9歳の時にマリナーズで現会長付特別補佐兼インストラクターに就くイチロー氏が出場する試合を両親と観戦し大きな衝撃を受けた。その時、加藤少年の心に芽生えたのは「たとえメジャーリーガーになれる可能性が1%だったとしても挑戦するんだ」の思いだった。

 高校生活を終え、複数球団のスカウトからドラフト指名の意向を告げられた時、プロ入りと推薦入学が内定していた米大学野球の名門UCLAへの進学の二者択一を迫られた。両親からは、「自分の人生は自分で決めなさい」の言葉と共に、メジャーリーガーになる確率を高卒と大卒の両面から分析し、生涯賃金差までを割り出した独自の資料が手渡された。そして加藤豪将は決めた――。

「プロの投手を早く見た方がプロになる近道だと思いました」

 日本で過ごしたのは僅かに数年。米国で生まれ日本野球を経験しない日本人選手が世界最高峰の舞台へ上り詰める史上初のケースに挑んでいる。

 真っ黒に日焼けした25歳が記者に語った挑戦への道のりと人生観。さらに、オープン戦開始前日にデレク・ジーター球団オーナーが述べた訓示など、秘話を盛り込んだコラムを次週にお届けする。

 加藤豪将の“今”を「心技体」で解きほぐす。(木崎英夫 / Hideo Kizaki)

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