タイ・バンコクでもマスクは売り切れ状態、大量に売っていた「意外な場所」とは?

発生以来2ヶ月以上が経過しながら、一向に収束の気配が見えない新型コロナウィルスですが、その猛威は東南アジア各地においても例外ではなく、タイでは感染が確認された42人のうち、3月1日、免税店勤務の35歳男性の死亡が確認されました。タイ国内初の死者が出たことで、これまで比較的ユルい姿勢をみせていたタイ人社会でも、マスク着用者が急増。マスクは一転して品薄状態に陥っています。特にバンコク中心、日本人滞在者も多く暮らすエリアのドラッグストアでは「マスク完売」が続いており、入荷しても即売り切れてしまうのが現状です。


タイの現状は?

タイ政府は素早い対応を見せてはいます。タイ商務省は、買いだめ防止策としてマスク一枚2バーツ(約7円)以下での販売を義務づける通達を出しました。また、タイ保健省の門前ではマスクの無料配布も行うなどさまざまな対策を講じているものの、もはや焼け石に水状態で需要と供給が追いつかず、マスク不足の解消にはつながっていません。

例年なら多くの観光客で賑わっていたワットポー、マハナコンタワー、マーブンクロンセンターなどタイ屈指の観光地やショッピングセンターからも人の姿が消えてしまい、とりわけ中国人観光客を満載したバスが続々と乗り付けていたナイトマーケットの名所、タラートロットファイ・ラチャダーはオープン以来はじめての閑古鳥状態に。その夜景の美しさがSNS映えスポットとして有名な夜市であるタラートロットファイですが、現状においては客足が途絶えたことで臨時休業の店も多く、コロナウイルスの影響の大きさを実感するばかりです。

店頭には「NO MASK」の張り紙も

しかし、そんな沈んだ状況下でありながら元気に営業していたのは、バンコクの街中をいくら探しても見つからなかったマスクを大量に売る屋台でした。タラートロットファイにアクセスできる地下鉄MRTタイカルチャーセンター駅から続く道端では、急ごしらえの屋台を設営した商魂たくましいマダムが、医療用サージカルマスクのバラ売りとまとめ売り、およびコットン製マスクはそれぞれ一枚10バーツ(約35円)と、どこかの高額転売とは大違いの良心価格で販売しています。

ご丁寧に1枚ずつビニールパックまでされており、コットン製マスクはマダムの友人によるお手製で再利用も可能とのことで、ハンドメイドバザーのようなほのぼのとした風合いが魅力的。衛生面では完全にアウトと思われますが、衣料品問屋が集結するプラトゥーナム市場近辺では、排気ガス渦巻く路上にて、手作りマスクをむき出しで並べる雑な屋台もあったぐらいので、こちらはビニールで覆われているだけまだマシなのかもしれません。

一枚一枚パックされたマスク

また、路上に簡易な台を設えただけの店にも関わらず、中国人が普段使いする決済アプリ「アリペイ」でも支払い可能だったりするあたり、その店構えとは裏腹に利便性もしっかりアピールしています。そうした企業努力もあってか、見ている端からマスクは飛ぶように売れていきます。

タイ市場内のマスク事情

あらためてマーケットの場内に入ると、さらに複数のマスク屋台が確認できました。使い捨てサージカルマスクから高密度のN95型マスクまで、種類も在庫も豊富です。

タイ生産の日本向け輸出品マスクは16枚入り250バーツ(約875円)、ベトナム製のマスクは一箱50枚入りが800バーツ(約2,800円)。N95型は一枚70バーツ(約245円)、20枚セットで1,300バーツ(約4,550円)という価格帯です。コロナ騒動以前からもPM2.5問題でマスク需要が高かったタイでは、模造品や粗悪品のN95型も数多く出回っていたため、これらの屋台で売られているマスクも正規品かどうかは疑問が残りますが、それほど暴利という価格でもないところは、良くも悪くもタイらしいといった印象です。

屋台に置かれたマスクを買う人

店員にマスクの売れ行きを尋ねてみると、すべての屋台から「まあ、ボチボチですね…」と判で押したような返答がかえってきます。この対応から察するに(価格面でもいえることですが)これらの屋台間で何らかの談合が行われているのは間違いないでしょう。

どこの国でも市場にはパワーがあります。かつては日本でも終戦直後の闇市で、全国的に物資が不足していたにも関わらず、多くの生活必需品が溢れ返っていたという歴史にもあるように、庶民が非常時に頼れるのは政府の防護策や配給よりも、商魂たくましい人びとが行き交う市場なのだと実感させられた次第です。

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