“首だけ女”から妹を守れ!『マッハ!』監督の最新作はアイドル・ホラー!?『ストレンジ・シスターズ』

『ストレンジ・シスターズ』©2019 SAHAMONGKOLFILM INTERNATIONAL CO., LTD. ALL RIGHTS RESERVED

かつて『マッハ!』(2003年)、『トム・ヤム・クン!』(2005年)、『チョコレート・ファイター』(2008年)と大傑作アクションを連発したプラッチャヤー・ピンゲーオ監督の最新作がやってきた。その名も『ストレンジ・シスターズ』。呪われた宿命に翻弄されつつ立ち向かう姉妹(として育てられた従姉妹)が主人公だ。

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アイドル映画的な“甘さ”に逃げない本格ホラー・アクション!

“妹”のモーラーを演じるのはバンコクを拠点に活動するBNK48のメンバー、ミューニックことナンナパット・ルートナームチューサクン。怪物“ガスー”となってしまった母を持ち、自身もガスーとなるかもしれない宿命のモーラーを、ガスーの集団がつけ狙う。それを守ろうとするのが“姉”のウィーナー。幼いころから妹を守るという役目を課せられ、呪文や法術、格闘術を教え込まれてきた。そういう意味で、ウィーナーもまた宿命に縛られているわけだ。

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ガスーとして“成長”していってしまうモーラーの姿をはじめ、2人は高校生でありながら普通の青春とは無縁。そんな息苦しさが映画を覆う。この映画、簡単に言ってしまえば日本にもある“アイドル・ホラー”なのだが、そこはピンゲーオ監督、役者に対して容赦ない。姉妹の宿命がどんなラストを迎えるか。低予算だが安易な“甘さ”に逃げないのが本作の魅力だ。

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異なる個性を放つ二人の若き女優に注目! 全てが新鮮なタイ伝奇ホラー

ミューニックはもともと子役出身ということで、アイドルだが演技はお手の物なのだろう。呪われた宿命を持つ少女のあやうさ、はかなさ、健気さをしっかり表現。だからこそクライマックスの展開に仰天させられる。

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姉役のプロイユコン・ロージャナカタンユーも熱演。いわゆる“美少女”とは一味違う、ふてぶてしさも感じさせる顔つきが素晴らしい。

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本作のモチーフであるガスーとは、東南アジア一帯に伝わる怪物とのこと。40代以上の映画好きなら覚えているかもしれない、レンタルビデオ爛熟期に登場したカルト作『首だけ女の恐怖』(1981年)と同じである。つまり『ストレンジ・シスターズ』には伝奇ホラーの要素もあり、我々にとっては“未だ見慣れぬ恐怖”が味わえるわけだ。

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日本やアメリカ、イギリスのホラーとはどこか違う。タイ語の響きも含め、映画全体の雰囲気そのものが新鮮な映画だ。

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文:橋本宗洋

『ストレンジ・シスターズ』は「未体験ゾーンの映画たち2020」にて2020年3月6日(金)よりヒューマントラストシネマ渋谷、4月16日(木)よりシネ・リーブル梅田で公開

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