「高齢者施設の対策再検証を」長崎大学病院感染制御教育センター長 泉川公一氏

高齢者施設の対策について話す泉川氏=長崎市坂本1丁目、長崎大学病院

 新型コロナウイルス感染症は、高齢者が特に重症化するリスクが高い。高齢者が集団で生活する介護・福祉施設などでは集団感染する危険性もあり、命を守るために予防の徹底と感染者の早期発見が求められる。長崎大学病院感染制御教育センター長の泉川公一氏に、施設と介護職員らが取るべき対策を聞いた。

 -高齢者が重症化し、亡くなる例が多い。
 中国の感染者4万4672人のデータでは、感染者は50~59歳が最も多い。一方で死亡率は70歳以上が高く、80歳以上になると感染者1408人のうち14.8%が亡くなっている。心血管障害や糖尿病など基礎疾患を持っている人の死亡率も高い。今やるべきは、亡くなる可能性が高い人を守ること。高齢者で基礎疾患を持っている人を優先的に検査をし、感染者を見つけて入院させることが重要。軽症者が病院のベッドを占有した結果、速やかに治療が必要な人を助けられない、という事態は避けなければならない。

 -高齢者施設の対策も重要になる。
 密閉した空間で感染が起こりやすい、職員を介するなどして広がりやすい、入所者が体調を上手に伝えられず見つかりにくい、という悪い条件がそろっている。普段から入所者の体温はモニターしていると思うが、発熱した人は個室に移すなどして他の人と接触させないようにして医療機関へ相談してほしい。職員も含めて出入りする人の健康状態をしっかりチェック。面会を禁止にした施設もあるが、家族の面会は最小限の人数、短時間とするなどの工夫も良いと思う。
 日ごろからインフルエンザやノロウイルスなど感染症対策に敏感に取り組んでいるところも多いが、正しくできているのか再検証が必要だ。例えば加湿器はウイルスを増殖させないために有効だが、清掃・管理をしていなければカビが出るなどして、逆にリスクになりかねない。

 -職員は何に気をつけたら良いか。
 軽症や症状がない感染者もいる可能性がある。自分が感染しているかもしれない、と意識してほしい。熱があったら絶対に出勤しない。少し風邪っぽいな、というときは普段以上に手指消毒とせきエチケットをしっかりやる。入所者に処置をする際にはアルコール製剤で手指を消毒したり、せっけんでの手洗いも今まで以上に丁寧にしてほしい。
 
 【略歴】いずみかわ・こういち 1969年生まれ。南島原市出身。長崎大医学部卒。日本環境感染学会理事や日本感染症学会の評議員なども務める。2013年から現職。


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