第14回 「自由律俳句」

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この度、私と又吉直樹氏の共著による自由律俳句集『蕎麦湯が来ない』が刊行されることになった。『カキフライが無いなら来なかった』『まさかジープで来るとは』に続くシリーズ第3弾である。

自由律俳句とは五七五のリズムや季語にとらわれずに作る俳句のことである。古くは尾崎放哉の「咳をしても一人」「足のうら洗えば白くなる」や種田山頭火の「分け入つても分け入つても青い山」「まつすぐな道でさみしい」などが有名だ。

今回の新刊からも何句か紹介してみよう。

誰もいない時計店で動いている針(せきしろ)

写真にうつらない月を仰ぐ(又吉直樹)

もう引き返せないということもない(せきしろ)

ブランコに濡らされた手を拭く(又吉直樹)

用途の無い棚を眺めている(せきしろ)

そうだふりかけがある(又吉直樹)

さて今回は、新刊の発売を記念して最近作った自由律俳句を掲載する。興味を持っていただけると幸いである。

数を数えて報告する子ども

買い物カゴの底に大根の葉

松葉杖で試合を見る三年生の女子

弟にあの時を探している

降る雪を外灯が切り取っている

標識に知っている地名が現れた

蹴るつもりはなかったカナブン

これは公式球じゃないからと言い訳

コガネムシは金持ちという口笛が向こうから

空港のテレビではさんまの声も聞こえない

この時間でこんなに暗いんだという話をして駅へ

ホームレスが地震速報を聴いている

覗いて潰れているなと独り言

水槽を叩いても動かない

声だけ笑う勧誘の女

投入口を塞ぎ続けるガムテープの使命

陽炎の向こうのコイン精米機まで

焦るなわざと着ている可能性もある

ランニングシャツの老人が座って夏の完成

師走だろうが自転車は将棋倒しになる

魚がいただけでテンションが上がった時もあっただろ

普段怒らない子がもたらす静寂

ボーナスステージのように彼岸花だらけ

そうですねと興味がない

お金がないことを言わなければいけない

供えられた花から増えた

魚のここは親が食べるところ