「 知的障害者ならばれない」 警戒心の弱さに付け込み性犯罪

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男は知的障害のある女性を狙い、犯行を繰り返した(写真はイメージ)

 「相手の名前なんて知ってても意味がない。誰も持っていない写真や動画さえ撮れればいいんだから。相手が障害者なら犯行がばれにくいことも、当然分かった上で実行した」
 2月下旬と3月上旬、長崎拘置支所(長崎市白鳥町)の面会室。男は、記者の質問に淡々と動機や生い立ちを語った。
 長崎市の会社員だった被告(50)。長崎市内の路上やアパート敷地内などで10~20代の知的障害のある女性3人を狙い、体を触り裸の写真を撮るなどわいせつな行為をしたとして、準強制わいせつ容疑など3事件で昨年末から今年2月にかけて逮捕、起訴された。現在は長崎拘置支所に収監され、長崎地裁で公判が進んでいる。
 男は、最初の犯行は「12年前」と告白した。裁判で罪に問われているのは7年前から昨年末までの事件。既に時効を過ぎた事件もある。公判での被害者は3人だが、実際の被害者は「4~5人」。逮捕時、自身のパソコンのハードディスク(HD)には収集した画像・動画を200点近く保管していた。相手の顔はだいたい記憶していると言うが、誰の名前も知らない。
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 「魂の殺人」とも呼ばれる性犯罪。中でも障害者への犯行は被害立証が特に難しく、潜在化しやすい。被告の告白や専門家らへの取材を通じ、障害者を狙った性犯罪の実態と課題を探った。

 「たまたまの出会いだった」。長崎拘置支所で男は自らの過去を話し始めた。

■偶然の出会い
 14~15年前のある日。男がバイクを走らせていると、突然強い雨が降ってきた。古い車庫を見つけ、雨宿りすることにした。しばらくして、制服を着た女の子がびしょぬれになって駆け込んできた。
 「こんにちは」。男があいさつすると、彼女は無邪気な笑顔で返事をした。雨が降りやむまで、少しだけ言葉を交わした。その雰囲気から、男は相手が知的障害のある中学生だと察した。
 途中、彼女が言った。「学校でからかわれているの」。男は聞き返した。「どんなふうに?」
 「服を脱がされるの。こんな感じで…」。そう言っていきなり制服を脱ぎ始めた。男は慌てて服を着させたと言う。帰り道、男は「障害者は人懐っこくて警戒心が弱い。言うことを簡単に聞いてくれる」と考え始めた。
 それ以降、インターネットで女性の裸が投稿されている掲示板を頻繁にチェックするようになった。その中で、『障害者なら簡単に裸を撮影できる』という書き込みが目に付いた。「自分もやってみたい」。願望は少しずつ強くなっていった。
 数年後、男は「たまたま」別の場所で彼女を見つけた。高校生に成長した彼女に迷わず声を掛けた。そして、別れ際に「裸を見せて」と頼み、人けのない屋外で携帯電話のカメラを使って彼女の裸を撮影した。抵抗されることはなかった。
 知的障害の女性だけを狙い、体を触り裸の写真を撮るなどして準強制わいせつ容疑などで逮捕、起訴された長崎市の元会社員の被告(50)。最初の「成功体験」を経て、他の女性障害者にも同様の性犯罪を繰り返し、昨年末に逮捕されるまで計十数回の犯行に及んだ。
 「誰も持っていない写真や動画を自分が持っていることへの優越感や満足感がほしかった」

人けのない屋外で彼女の裸を撮影した。抵抗されることはなかった(写真はイメージ)

■犯行2~3分
 1969年6月5日、大分県に生まれた。小学生のとき、クラスの友達の影響で記念切手集めに熱中した。「収集癖の原点」と言う。高校卒業後は2年間の浪人生活の末、長崎県内の大学に進学。卒業後は県内で就職し、逮捕時は家具販売店に勤務していた。
 犯行の手口を詳細に明かした。ターゲットとなりそうな女性を見つけると、乗り降りするバス停に待ち伏せるなどして尾行した。人けのない狭い道に入ったところで声を掛け、服を脱がせ胸や体を触りながら携帯電話のカメラで撮影した。1回の犯行時間は2~3分だった。
 「相手はどんなことをされているのか分かっていない様子だった。自分は強姦(ごうかん)目的ではない。撮った写真や動画はあくまで観賞用だが、撮影直後以外はあまり見ない。数日後には新しいものを撮りたくなる」
 被害者へ謝罪の気持ちはあるか。再犯の可能性はないのか。記者の質問に、被告はうつむきながら答えた。「被害者の親には申し訳ない。逮捕されて自分の家族にも迷惑をかけているので、もうやらない」

■自尊心の低さ
 犯罪者の精神病理に詳しい聖マリアンナ医科大の安藤久美子准教授(司法精神医学、児童精神医学)は「今回の犯行は、希少価値のあるものを集めたい欲求と性的欲求が合わさっており、被告の自尊心や自己肯定感の低さが可能性として指摘できる」と分析。再犯防止には「保護観察所やカウンセラーによる定期的な観察や、被告の気持ちをくみ取ったカウンセリングが有効」と指摘する。
 障害者への性犯罪について、県警幹部は「被害者が状況を説明できない以上、確たる客観的な物証がないと厳しい。被害者の供述をベースに捜査できず、立件が難しくなる。今回押収した画像や動画は一部時効を過ぎたものもあるが、物証が残っていて犯行日時を特定できたのが大きい」と実情を明かす。


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