環境悪化の因果関係焦点 諫干即時開門訴訟10日判決

 諫早市小長井町と雲仙市瑞穂、国見両町の漁業者33人が、国営諫早湾干拓事業の潮受け堤防排水門の即時開門を国に求めた訴訟の判決が10日、長崎地裁(武田瑞佳裁判長)で言い渡される。主な焦点は▽堤防閉め切りと漁場環境悪化の因果関係▽開門しないことの違法性▽漁業補償契約の効力-になりそうだが、2010年12月の開門確定判決後、「非開門」の司法判断が続いており、原告側に厳しい判断が予想されている。

 同訴訟は10年3月と11年3月、諫早湾内で漁船漁業やカキなどの養殖に従事する43人が提訴。昨年9月の結審までに42回の口頭弁論が開かれた。この間、10人が死亡や漁協脱退で取り下げ、現在の原告は小長井13人、瑞穂16人、国見4人の計33人。
 原告側は「諫早湾の海水を調整池に流入させ、海水交換ができるよう開門操作を行うこと」を開門と定義。「閉め切り後、調整池からの排水の影響で赤潮や貧酸素水塊が頻発するなど漁場環境が悪化」「開門すれば営農環境も漁業も改善」などと主張してきた。
 一方、国は原告側が具体的な漁獲量の減少を主張、立証していない点を挙げ、「湾閉め切りとの因果関係は認められない」と反論。「開門すれば防災や営農、漁業に被害が生じる」「有明海再生事業などで改善成果が出ている」「漁業補償契約ですべて解決」とし、請求棄却を求めている。
 2月21日、福岡市内で会見した原告側弁護団の馬奈木昭雄団長は判決の見通しについて「負けるに決まっている」と即答。別の漁業者の開門請求訴訟と営農者らの開門差し止め訴訟の判決を挙げ、「農業被害を『甚大』と抽象的に認定して開門を差し止めたが、開門を求める漁業者には個々の被害額の立証まで求める。今回も負けさせるという司法の意思決定ができている」と厳しい見方を示した。
 第1陣提訴から10年、開門問題を巡る状況は大きく変化。国は開門確定判決を履行せず、17年4月、「開門せずに100億円の漁業振興基金案での和解を目指す」方針に転換。漁業者の開門請求訴訟など2件で最高裁は昨年6月、初めて「非開門」判断を確定させた。国が開門確定判決の執行力停止を求めた請求異議訴訟の差し戻し審が福岡高裁で審理されている。

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