-月経(生理)痛はどうして起こるのか。また、対処法は。
月経時は女性ホルモンの急激な変化が起こり、子宮を収縮させて経血を出させるプロスタグランジンがでる。これが全身に影響を及ぼし痛みの原因となる。痛みが苦痛なときは、がまんせず早めに鎮痛剤(痛み止め)を飲むことが大切。
鎮痛剤はプロスタグランジンを抑える。前もって抑えるために前日から飲んでもいい。痛みが強くなり、がまんできなくなってから飲むと、効きにくくなったり、飲む量が多くなったりすることになる。
ほかにも昔ながらの方法だが、おなかや腰など痛いところをカイロや湯たんぽなどで温めるだけでも痛みを和らげる効果がある。
鎮痛剤、温める、それでも痛ければ、まず婦人科にきてほしい。現在、産婦人科医は鎮痛剤でもだめならピルという考え方に立っている。
◎排卵抑えるピル
-ピルとは。
排卵を抑えるホルモン剤。日本では1999年に避妊薬として低用量ピルが認可され、2008年には月経痛の治療薬として保険認可された。その後、種類が増え、さらに低用量化している。ジェネリック(後発医薬品)も出て、コスト的にも手軽に使えるようになった。
月経痛がひどい人は子宮内膜症に移行する場合があるので注意が必要。子宮内膜症は文明病ともいわれている。現在の女性は昔の女性と比べて月経の回数が増えている。昔の人はお産の回数が多かったし、初経の年齢も遅く、閉経も早かった。現在は出産の回数が少なく、産まないという選択をする人も増えた。こうした女性のライフスタイルの変化が背景にある。内膜症自体の原因はよく分かってないが、進行させるのは排卵、月経だ。
内膜症の予防が大切なのは、一つは痛みを抑えるため。仕事に支障があるほどの痛みが毎月毎月あればモチベーションに影響する。
もう一つは、不妊症になる可能性があること。
さらに内膜症によって卵巣が腫れることがあり、卵巣がんのリスクも上がる。不妊症やがんの予防のためにも内膜症は予防する必要がある。
◎血栓症にリスク
-ピルの安全性は。
安全面で一番の問題は血栓症のリスク。いわゆるエコノミークラス症候群というもの。これは命に関わるので、そのリスクを減らすためピルの低用量化が進んでいる。用量というのはエストロゲン(女性ホルモン)の量。血栓症のリスクはエストロゲンの量に関係しているので、エストロゲンの低用量化が進められてきた。
あとはマイナートラブルとして、吐き気やちょっとした不正出血、頭痛、乳房の張りなど。ピルに対する個人の反応はさまざまだが、これらの症状も低用量化で減ってきている。
ピルの歴史は女性解放の歴史でもある。仕事、結婚、妊娠、出産の計画を立てることは、女性にとって、とても大切なこと。
-ピルは何歳ぐらいから飲めるのか。
婦人科のガイドラインでは、初めての月経から30代まで。血栓症のリスクは、年齢と喫煙と血圧の三つが大きく関わる。40歳以上は血栓症のリスクをみながら、投与が可能かどうかを慎重に判断する。
-ほかに月経のトラブルにはどんなものがあるか。
PMS(月経前症候群)。月経前はプロゲスチン(黄体ホルモン)が分泌されるが、それがいろんな形で影響して、むくみ、頭痛、体重増、食欲増進などを起こす。ピルが効く人もいるが、特効薬や万能薬はない。月経が始まればよくなるという周期性が特徴だ。
◎長い人生を守る
-無月経について。リスクと治療法は。
無月経であっても、エストロゲンの量が保たれていればいいが、減少しているのであれば、疲労骨折を防ぐためにも、エストロゲンを補充するという更年期のときのような治療が必要な場合もある。
ダイエットやスポーツ選手の体重コントロールは大切だと思うが、体重減少と同時にエストロゲンが減少することは多い。
スポーツ選手の中には月経はなくていいという人もいるが、その後の妊娠、出産を考えると決していいことではない。競技のパフォーマンスと骨量維持のバランスをどのように保ち、長い人生を守るかという視点で考える必要がある。
無月経の治療にはいろんな選択肢があり、飲み薬やシールのような貼り薬もある。骨を守るために最低限のエストロゲン補充療法もある。
また、試合や受験の日に月経が当たらないようにピルにより月経コントロールもできる。