選挙戦にも新型コロナ余波 握手や集会自粛、ネット活用

消毒液やマスクを準備して開かれた候補者の出陣式=湯河原町内

 新型コロナウイルスの感染拡大に警戒が高まる中、当初の予定通り10日に告示された神奈川県湯河原町議選。立候補の届け出を済ませた各候補は街頭に飛び出したが、支援者との握手や屋内での集会を控える動きが目立つ。「有権者の安全を最優先に考えれば仕方ない」。陣営からは戸惑いの声も漏れ、自粛ムードに包まれた異例の選挙戦が始まった。

 「みなさんの安全を考えて万全を期したい」

 町中心部の屋外スペースで実施した出陣式で、ベテラン現職は集まった支援者に呼び掛けた。会場ではマスクを配布し、手指用の消毒液も準備。新型ウイルスへの不安が広がる現状を踏まえ、「観光など産業への影響も出てきている。一刻も早い終息が必要だ。当選したあかつきには議会と町で速やかに対策を進めていく」と訴えた。

 定数14を巡り現職、新人、元職の計17人が出馬した町議選。政党の公認候補は、党本部の意向で支援者との握手や屋内施設での集会を自粛している。

 ある新人の陣営は「集会などで知名度を高めたいところだが、有権者の安全を考えると仕方ない」。現職は「握手は求められたら断らないが、自分からは控えている」と複雑な心境を明かした。

 一方、別の新人はインターネットを活用して政策を訴える。演説を中継するなど制約がないネット空間を生かして選挙戦を展開する考えだ。有権者との接触が少ない選挙カー中心の運動を繰り広げる候補の姿も目立ち、ある若手現職は「自分たちも苦心しながら選挙戦に臨んでいる」と打ち明けた。

 町議選を巡り、町選挙管理委員会は感染防止対策を講じることを前提に、予定通りの日程で実施することを決めた。各投票所で鉛筆や記載台を消毒するほか、定期的な換気と選挙従事者らのマスク着用を徹底している。

 ただ、有権者にも戸惑いは広がる。2歳の長男がいる30代の女性会社員は「子どもを投票所に連れて行こうか迷っている」と吐露。70代の男性は「投票率の低下につながらないか心配」と話した。投開票は15日。

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