【解説】被害基準がアンバランス 諫干即時開門訴訟

 諫早、雲仙両市の漁業者が即時開門を求めた訴訟の長崎地裁判決は、原告側弁護団の見立て通り、原告にとって厳しい内容となった。
 判決は、潮受け堤防閉め切りによる諫早湾内の「環境の変化」を認めながらも、漁業被害との因果関係は否定。漁獲量の減少、魚類資源の減少を生じさせている要因については「明らかではない」とし、消化不良感は否めない。潮受け堤防の閉め切り自体が漁業被害をもたらす「環境の変化」と主張する漁業者側には受け入れがたい判決だろう。
 同地裁は2017年4月、開門差し止めを命じた別の訴訟の判決で、最も開け幅が小さい制限開門でも農業被害の「蓋然(がいぜん)性」があると認定した。だが、今回の判決は漁業種ごとの被害の立証について高いハードルを求めており、「(農業被害と漁業被害の)基準がアンバランス」(原告側弁護団)との不満もくすぶる。
 昨年6月、関連訴訟2件で最高裁が初めて「非開門」判断を確定させたことで、司法のお墨付きを得た国は「開門せずに100億円の漁業振興基金案での和解」を繰り返す。漁業者らが掲げる「農・漁・防災共存の和解」は果たして実現するのか。少なくとも今回の判決だけでは誰もが納得できる解決には至らない。

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