アイナ・ジ・エンド×爪切男「死にたい夜にかぎって」のユーモアに学ぶ、“愛”「批判することが簡単な時代だからこそ、愛のある人に」

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アイナ・ジ・エンド×爪切男「死にたい夜にかぎって」のユーモアに学ぶ、“愛”「批判することが簡単な時代だからこそ、愛のある人に」

「『死にたい夜にかぎって』に出会えたことは、宝物です。死にたい夜にかぎってのおかげで、死にたい夜を超えていくことができました」

著者自身の実体験を基に綴られた爪切男(つめきりお)さんの小説「死にたい夜にかぎって」(扶桑社)。魅力的な女性たちとの忘れられない失恋エピソードが、ユーモラスな筆致で描かれた作品です。そんな「死にたい夜にかぎって」との出会いを「宝物」だと言い、文庫版には解説文も寄稿している、BiSHのアイナ・ジ・エンドさん。

本作に感銘を受け、2019年8月にはBiSHが所属するWACKとSWの企画によるZINE「AiNA wo FUCK and FUCK」で爪さんに対談のオファーもしたことのあるアイナさんは、主演に賀来賢人さんを迎えた「死にたい夜にかぎって」(MBS/TBSドラマイズム)の実写ドラマ化にあたり、エンディング主題歌を書き下ろし。原作、ドラマと同名の楽曲「死にたい夜にかぎって」は、アイナさんにとって「人生初めての“曲の書き下ろし”」となったそうです。

このたび、原作のファン・アイナさんと、原作者・爪さんによる対談企画を実施。アイナさんのZINEでの対談以来、話をするのは2度目というお二人が、「愛」を語ります。

■「僕とアスカの物語の主題歌を、本当の意味で作ってくれたような気がしたんです」

──お二人でお話されるのは、アイナさんのZINEでの対談以来ですか?

アイナ「そうです。爪さん、すごいですね。ドラマ化されて」

「僕は何もしてないです(笑)。曲、ありがとうございます。この前、BiSHのコンサートに行ったんですよ」

アイナ「そうなんです。来てくださって」

「東京国際フォーラムの2階席から見させてもらって。あいさつに行こうかなと思ったんですけど、分不相応だなと思って(笑)」

アイナ「どういうことですか(笑)」

「楽屋の近くまで行ったんですけど、なんだか周りの雰囲気に負けて恥ずかしくなっちゃって。あいさつせずに帰りました(笑)」

アイナ「え~(笑)」

──アイナさんにお聞きしたいのですが、エンディング主題歌「死にたい夜にかぎって」はどのように制作されたのですか?

アイナ「昨年の10月末か11月頃に、(BiSHの所属レーベルの)エイベックスさんからお話を聞きました。エイベックスのスタッフさんも、私が原作をすごく好きだということは知っていたので『よかったじゃん!』『うれしいね』って言ってくださっていて。その時はエンディング主題歌を歌わせていただけることをただただ喜んでいたんですけど、どうやら自分で曲を作るというお話だと分かって。『これはヤバい!』『書き下ろしとかしたことない!』って、慌てました」

──曲を書き下ろすのは、本作が初めてだと伺いました。

アイナ「初めてだったんです。でもいざ曲を作ってみると、『死にたい夜にかぎって』の原作を読んだのは2年も前なのに、爪さんの言葉がずっと脳裏にこびりついていて。だから苦しまずに作ることができました。すらすらと歌詞も浮かんでくるし、『爪さんだったら、こういう雰囲気、こういう瞬間は、こんなことを言うかもな』って感じた言葉を音に落とし込んだりして。私の曲を書き下ろす初めてが『死にたい夜にかぎって』でとてもよかったし、光栄です」

「なんでもね、初めてはありがたいですね」

アイナ「…そうですか?」

──……。

「そういう意味で言ったんじゃないですよ!(笑)」

アイナ「(笑)」

「違いますって!(笑)。僕、今まで“初めて”にはなかなか選ばれない人生でしたから!」

アイナ「(ちらっと爪さんを見て)」

「うれしかったですよ?」

アイナ「(笑)。独特ですよねぇ(笑)」

「自分の描いた作品に曲を書いてもらうというのは恥ずかしいですね。でも、僕も出来上がった曲を聴かせてもらった時、何も違和感がなかったんです。先ほどアイナさんがおっしゃっていた『すらすらと歌詞が浮かんでくる』というのが、逆の立場からしても納得というか」

アイナ「うれしいです…!」

──先ほどおっしゃっていた、脳裏にこびりついていた爪さんの言葉というのは、具体的にどの部分ですか?

アイナ「歌詞に落とし込んだ部分で言うと“矢継ぎ早”という言葉です。身長がすごく高い女性と会うシーンで、『自分のことを矢継ぎ早に話す彼女の顔を見て』って書いてあったんですけど、私の日常会話では、人生で一度も“矢継ぎ早”という言葉は出てこなかったんです。爪さんの本を読んでその言葉を知ったんですけど、『この言葉、本当にめっちゃしゃべってそうに聞こえる言葉だな』と思って。こう、“ダダダダダ”って畳み掛けるというか。この言葉を曲に落とし込んだら、ゆっくりなテンポの中でちょっとよい違和感が残るんじゃないかと思ったので、爪さんの言葉をお借りしたんです」

「僕は曲を聴いて、言葉遣いが自然だなって感じて。“矢継ぎ早”っていうのも、そういう狙いで使ったというのは初めて聞きました。あと、ティーザーの映像を見てびっくりしました。あれ、新宿のガード下ですよね?」

アイナ「そうです。本の中でも、『私達の愛の巣が新宿の大ガード下と同じにおいがするようになっても』というふうに出てきますよね」

「僕、歌舞伎町のバッティングセンターで働いている時に、よくあのガード下を通って出勤してたんです。そういう思い出の場所が重なったこともあって、アイナさんの曲を聴いた時に、場所も、雰囲気も、ばっちりハマるなって感じたんですよ。僕とアスカは音楽の趣味が全く違うので、2人の共通のテーマソングみたいな曲は作れなかったんですけど、アイナさんやましのみさんの曲を聴くと、お二人が初めて、僕とアスカの物語の主題歌を本当の意味で作ってくれたような気がしたんです」

アイナ「ありがたい…」

──なぜティーザーの撮影場所に、新宿のガード下を選んだのですか?

アイナ「ずっとBiSHのドキュメント映像を撮ってくださっている、エリザベス宮地さんという方に今回も撮っていただいたんですけど、宮地さんはすごく人間に寄り添ってくれる方なんです。なのでこの『死にたい夜にかぎって』の曲を聴いたり、私が原作を好きだということを聞いて、ガード下にしてくれたんだと思います」

■中野ブロードウェイを歩くと「ちょっとシャキッとできるんです」

──作中にはゆずの「夏色」やフジファブリックの「茜色の夕日」など、印象的な光景と深く結びついている音楽がいくつも登場しますが、アイナさんにとってそんな曲はありますか?

アイナ「いろいろあるんですけど、うーん、何を挙げましょう…(爪さんの方を見て)」

「僕は答えない方がいい(笑)」

アイナ「答えないんですか?」

「僕が答えたら、風俗店で反省文を書かされた時に流れてた曲とかになります(笑)」

アイナ「反省文?(笑)」

「反省文を書いてる時、ずっと『Beat It』が流れてて、それがすごく嫌で(笑)。なんでこんな目に遭ってるんだろうって…。本番強要とかじゃないですよ?」

アイナ「あー…(苦笑)」

「違います!(笑)。なんか、イメクラのプレールームで越えちゃいけないビニールテープを踏んじゃったらしくて。それで反省文を書く羽目に…」

アイナ「あ、前に言ってましたね(笑)」

「店員さんに怒られている間もずっと『Beat It』が流れてるから、マイケル・ジャクソンも浮かばれねぇなぁ…って。そういう思い出しか出てこないから、アイナさんどうぞ(笑)」

アイナ「この後に言うとかすむんですけど…(笑)。私はデミ・ロヴァートの『Skyscraper』という曲です。悲痛な叫びを優雅に歌っている感じが、ただの歌じゃない感じがして。自分の上京した時の心境と似ていて、その頃はずっと聴いていました」

──アイナさんは、上京して中野にお住まいになったんですよね。爪さんも中野で同棲されていたとのことですが、中野で思い入れのある場所はありますか?

アイナ「爪さん、あれは? パスタの…」

「『ポポラマーマ』? あれは(神奈川県の)相模大野にいた時かな」

アイナ「『ポポラマーマ』、めっちゃ行ってみたいんです!」

「相模大野のお店はなくなってしまって」

アイナ「え~。残念です…。私は中野の街並み自体が好きです。中野ブロードウェイの中のお店って、20年、30年、40年と続いているお店も多くて、おじいちゃんが働いていたりするんですけど、そのおじいちゃんの娘さんなのか、私と同い年くらいの女の子が働いているお店もあるんです。そういう光景を見ると、自分がすごくちっぽけに感じるというか。そこを歩くと、ちょっとシャキッとできるんです。今はたまにしか行けないんですけど、ブロードウェイの街並みは好きです」

■「死にたい夜にかぎって」のユーモアに学ぶ、「愛」

──アイナさんは、主人公の浩史との共通点や、似ていると思う部分はありますか?

アイナ「共通点がないんですよー! 本当に全く…(笑)」

「僕からも言わせてください、ないです(笑)。アイナさんだけじゃなくて主演の賀来さんと初めて会った時も、何か共通点あるのかなって思ったし(笑)」

アイナ「それは…(苦笑)。でも、さっき賀来さんとお話した時に『なんとかなる、って考えることはよくある』っておっしゃってましたよ。そういうところは似てるかもしれないですね」

「言い方はあれなんですけど…しぶといじゃないですか?」

アイナ「私ですか?」

「はい(笑)。何かにたたき潰されそうになってもしぶとく生きてる、みたいな。それはグループ全般に言える魅力かもしれないんですけど」

アイナ「そうかもしれない(笑)」

「『死にたい夜にかぎって』というタイトルだと“死にたい”ばかりがクローズアップされるんですけど、書いていることは逆なんですよね。僕は“生きたい”と思っていて、今も生きてるわけで。そういう“生きる強さ”みたいなものは、共通点になっている気がします」

──アイナさんもコメントされていましたが、「死にたい夜にかぎって」は生きる中で起こってしまう困難をユニークに捉えたり、「ま、いっか」とポジティブに乗り越えたりする主人公の姿に、どこか救われる思いがするところが、読む人の心をひきつけているのだと思います。そんなふうに人生経験を重ねた爪さんに、アイナさんのような世代の方に向けてエールの言葉があれば伺いたいです。

「いきなり難しい…(笑)。なんだろうな、一概には言えないんですけど…。僕のイメージで、最近の若い子たちって簡単に批判をするように思えて。そういう時代なのかもしれないんですけど…」

アイナ「(頷く)」

「厳しい言葉になってしまうんですが、今はいろいろな情報を手に入れやすい時代だからこそ、好きなものをもっと増やしていくことが大切なんじゃないかなと思うんです。ただ貶すのは簡単だけど、“好き”が増えることによって、もっと相手のことを知った上での“愛のある批判”ができるようになるんですよね。単純に批判するのはつまらないなと。僕が伝えたいのは、今から批判することばかり覚えちゃうと、将来僕より早い段階で“老害”と言われるような人になっちゃうよ、ということです。もっといろんなものを好きになってほしいですね」

──その人の断片的な部分しか見ていないのに、批判的なコメントが書かれるといったことが、SNSでは日常茶飯事となっているかもしれません。

「そうですね。芸能人に対する批判でも多いですけど、ただ『嫌い』って言うんじゃなくて、もっとそこに愛があるべきだと思います。好きなものをどんどん増やすことで、いろいろな見方ができるようになると思うので。そうすればきっと、後々なんとかなると思います」

アイナ「確かに今って、批判することって簡単ですね」

「簡単です。『嫌い』とか『気持ち悪い』とかね、すぐ」

アイナ「言いやすいですもんね…」

「せめてもうちょっと面白い感じで『気持ち悪い』って言ってくれよ、というか(笑)。単純に『気持ち悪い』って言われると刺さるんで、思わず笑っちゃうような、愛のあるいじりをしてほしいですね」

アイナ「私も言われてみれば、人から何か嫌なことを言われた時、それがちょっと面白かったら自分も笑ってしまうんですよね(笑)。爪さんのお話を聞いて、私もそういうふうに、愛のある人になりたいなぁと思いました」

「(頷く)」

アイナ「まぁ、愛はある方やと自分では思ってるんですけど(笑)」

「うん、あるある。大丈夫です(笑)」

アイナ「はい(笑)」

【プロフィール】


アイナ・ジ・エンド
アイナ・ジ・エンド、セントチヒロ・チッチ、モモコグミカンパニー、ハシヤスメ・アツコ、リンリン、アユニ・Dからなる“楽器を持たないパンクバンド”BiSHのメンバー。2015年3月、BiSH結成。16年5月、1stシングル「DEADMAN」でメジャーデビュー。ハスキーボイスが特徴で、BiSHではほぼ全曲、振り付けも担当している。BiSHとしての活動のほかに、MONDO GROSSO、MY FIRST STORY、DISH//、SUGIZO(LUNA SEA)、ジェニーハイなど、数々のアーティストとのコラボレーションも話題に。20年2月26日、自身が作詞・作曲を手掛けたデジタルシングル「死にたい夜にかぎって」をリリース。

爪切男(つめ きりお)
1979年生まれ。香川県出身。2018年1月、「死にたい夜にかぎって」(扶桑社)でデビュー。現在、「週刊SPA!」(扶桑社)にて勤労エッセー「働きアリに花束を」、「よみタイ」(集英社)にてスクールエッセー「クラスメイトの女子、全員好きでした」が連載中。また、文芸Webサイト「BOC」(中央公論新社)にて好評を博した「男じゃない女じゃない仏じゃない」が書籍化予定。3月18日、大阪・Loft PlusOne Westにて、「フリースタイルダンジョン」(テレビ朝日系)でもおなじみ、またグラビア好きとしても知られるラッパー・呂布カルマと“女について語る”トークイベント「死にたい夜にかぎってたくさんの女を思い出す」が開催予定。

【番組情報】


MBS/TBSドラマイズム「死にたい夜にかぎって」
MBS 日曜 深夜0:50~1:20
TBS 火曜 深夜1:28~1:58
※放送時間は変更の場合あり
※ほか、SBC、ITVなど各局で放送中
https://www.mbs.jp/shinitai_yoruni/#onair

<配信情報>TBS放送終了後からTSUTAYAプレミアムにて見放題独占配信。TVer、MBS動画イズムで見逃し配信予定。

【プレゼント】


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●締め切り:2020年4月6日(月)正午

●発表方法:当選者の発表は、賞品の発送をもって代えさせていただきます。あらかじめご了承ください。

取材・文・撮影/宮下毬菜(TBS・MBS担当)