ドラえもん誕生50周年、劇場版アニメ第1作「のび太の恐竜」から40年! 1980年 3月15日 アニメーション映画「ドラえもん のび太の恐竜」が劇場公開された日

2020年は「ドラえもん」イヤー、連載開始50周年!

国民的漫画『ドラえもん』の単行本0巻が累計50万部を突破している。作者の藤子・F・不二雄は他界しており、別巻も含めて既に完結済みだった単行本のまさかの続刊は考えもしなかった。学年誌の連載だったために異なる第1話が複数存在するからこそ実現に至ったウルトラC。0巻という手段を閃いた発案者を褒め称えたい。連載開始から50年となる2020年はオリンピックイヤーであると共にドラえもんイヤーでもあるのだ。

『よいこ』から『小学四年生』までの6誌で1970年1月号(発売は1969年12月)から連載がスタートした『ドラえもん』。『よいこ』と『幼稚園』では翌年に終了するも、1973年からは『小学五年生』と『小学六年生』でも連載が始まる。1974年3月号で一旦最終回が描かれたが、1976年から10年間は『小学一年生』から『小学六年生』までの6誌での連載が続いた。もちろん他の連載もあったのだから驚異的な生産量である。

1971年4月に小学生となった自分は生粋のドラえもん世代。1974年夏に出されたてんとう虫コミックスとして出された単行本の第1巻もリアルタイムで買っている。忘れもしない、渋谷区本町の方南通り沿いにあった小さな書店であった。考えてみれば、西新宿にあった藤子不二雄先生の仕事場から極めて近いお膝元だったから計らずもいい選択だったのではないか。以来単行本はすべて発売時に買い続けてきたが、まさか1巻を買った45年後に0巻を手にするとは夢にも想わなかったわけで。

1980年、劇場版アニメの第1作「ドラえもん のび太の恐竜」

当然の如く、1973年に放映された最初のテレビアニメ化作品も観ている。原作とはちょっと異なる世界観に子供ながらも違和感を覚えていたら、僅か半年で終わってしまった。どうやら藤子・F・不二雄先生もあまりお気に召さなかったらしい。内藤はるみが歌った主題歌はなかなかの傑作だったと思うのだけれど。それでも単行本の発刊以来、漫画の人気はますます盤石となり、1977年に『月刊コロコロコミック』が創刊されるといよいよ機運が高まる。1979年には二度目のテレビアニメ化が実現して爆発的な人気を博すこととなった。

そして1980年の3月15日、東宝系で公開された劇場版アニメの第1作が『ドラえもん のび太の恐竜』である。同時上映は『モスラ対ゴジラ』のリバイバル版で、東宝チャンピオンまつりの再来の様だった。この頃は第3次特撮ブームが訪れており、5日後にはガメラシリーズの新作『宇宙怪獣ガメラ』が公開。『ドラえもん / モスラ対ゴジラ』と同日封切の東映まんがまつりの1篇には『仮面ライダー(スカイライダー)』の劇場用新作が組み込まれ、さらに4月からはテレビで『ウルトラマン80』が始まる。ついでに言ってしまうと松田聖子が「裸足の季節」でデビューするのも4月1日という、なんだか幸福感溢れる春だったのだ。

武田鉄矢の作詞による映画主題歌「ポケットの中に」

『のび太の恐竜』はもともとあった原作に大幅に加筆され、大長編に生まれ変わっていた。半分はゴジラ観たさに劇場に足を運んだのだが、思った以上に壮大なストーリー展開にすっかり感動させられてしまった。子供のみならず大人の鑑賞にも堪え得るドラマは好評を博し、その後現在に至るまで毎年(2005年のみ未公開)劇場版の新作が作られ続けている。そしてシリーズの魅力を支えてきた要素のひとつが、その都度作られる新曲である。発端となった『のび太の恐竜』の主題歌「ポケットの中に」は作詞:武田鉄矢、作曲:菊池俊輔、歌:大山のぶ代による、優しい言葉で紡がれた傑作。「贈る言葉」の直後にこんな素敵な歌が作られていたとは、武田鉄矢おそるべし!

武田は翌81年の『のび太の宇宙開拓史』では「心をゆらして」、さらに1982年の『のび太の大魔境』では「だからみんなで」、1983年の『のび太の海底鬼岩城』では「海はぼくらと」と作詞を続け、1985年の『のび太の宇宙小戦争(リトル・スター・ウォーズ)』に至って遂に主題歌「少年期」を自ら歌った。最近では福山雅治、山崎まさよし、星野源といったトップミュージシャンが毎回起用され、最新作『のび太の新恐竜』は Mr.Children のダブル主題歌が話題となっている。ドラえもん50周年に合わせるように桜井和寿も50歳とのこと。ドラえもんの音楽世界にミスチルが加わるのは実に喜ばしい。

だがやはり、個人的には武田鉄矢が作詞を手がけていた初期の素朴な楽曲群がひたすら懐かしく感じられてならない。未来への希望に満ちていた15歳の春、深く心に刻まれた「ポケットの中に」を聴くと今でも甘酸っぱい気持ちにさせられて、映画を観た40年前の日比谷映画街の風景がよみがえる。どこでもドアもタイムマシンも胸の奥では自在なのです。

カタリベ: 鈴木啓之

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