アート界はコロナ危機にどう対応しているか(随時更新)

展覧会やアートフェアの中止、延期など、新型コロナウイルスの世界的流行の影響はアート界にも及んでいる。行動制限もあるなか、国内外のアーティストや関係者はどのようなリアクションを起こしているのかを記録。情報は順次アップデートしていく。

ウフィツィ美術館の内部 出典:Wikimedia Commons

海外の動き(最終更新:3月13日 11:30)

◎ドイツの文化大臣がアーティスト支援の声明を発表。
「文化は、良い時にのみ与えられる贅沢ではありません」
ドイツの文化大臣、モニカ・グラッターズが3月11日に声明を発表。この状況が文化、クリエイティブ産業に大きな負担をかけ、とくに小さな文化機関やアーティストが大きな苦痛にさらされる可能性を示唆。人の集まるイベントのキャンセルはやむを得ないとしながらも、「私たちはアーティストたちを失望させません」として、政府の次期援助対策協議でアーティスト支援を議題に上げることを提案した。

◎ART Power HKが発足
3月4日、新型コロナウイルスの影響と政治危機を受け、香港のアートコミュニティがオンラインプラットフォーム「ART Power HK」を設立。香港の美術館やギャラリー、オークション・ハウスやメディアなど68の機関が参加するこのプラットフォームでは、オンラインでの作品鑑賞、スタジオ・ビジット、インタビュー、トークなどを発信する予定だという。現在、ドネーションを受付中。

◎イランで国際マンガコンテストを開催
感染拡大が深刻化しているイランでは、「We Defeat Coronavirus(打倒・新型コロナウイルス)」をモットーに、イランの芸術局と厚生省が協働してマンガコンテストを開催中。主催者は「イランの人々は、イランだけが影響を受けた国ではないということを知るべきだ。人々の希望を与え、恐怖を取り除くというテーマは、このウイルスとの戦いにおいて重要な役割を果たすだろう」とコメント。応募締め切りは3月30日。

◎カステッロ・ディ・リヴォリ現代美術館のヴァーチャル・ツアー
中国に次ぐ感染者数(3月12日時点)が発表されているイタリア。リヴォリ城に併設された「カステッロ・ディ・リヴォリ現代美術館」では、オンライン上の会場「Digital Cosmos」でバーチャルツアーを配信し、コンテンツの充実を図っている。館長のキャロリン・クリストフ・バカルギエフはこの動きを「美術館の公務」だと語る

◎ウフィツィ美術館がソーシャルメディアキャンペーンを開始
フィレンツェのウフィツィ美術館は休館を受け、「#UffiziDecameron」と題したソーシャルメディアキャンペーンを開始。人々がアートにつねに触れられることを目的に、美術館の公式InstagramTwitterでは毎日作品を紹介。3月10日にはFacebookページを開設し、学芸員のお気に入り作品の紹介ビデオなどを公開している。

◎シアトル在住のアーティストへの救済基金
シアトル在住のアーティスト、イジョマ・オルオ(Ijeoma Oluo)は3月10日、イベントや展覧会の延期・中止に伴い打撃を受けたアーティストを支援するための救済基金「Seattle Artists Relief」を設立。目標額は10万ドル(約1000万円)で、シアトルが拠点のアフリカン・アメリカン、ネイティヴ・アメリカン、ハンディキャップを持つ作家などを優先しながらも、なるべく多くの作家を支援する。なお、3月13日時点で6万ドル以上が集まり、すでに分配もスタートしている。

◎アーティストとコレオグラファーのための緊急医療補助金
ニューヨーク芸術財団とアーティストのロバート・ラウシェンバーグ財団が提携し、アメリカ在住アーティストとコレオグラファーに向けの緊急医療補助プログラム「Rauschenberg Emergency Grants」を設立。5000ドルを上限に、保険料、処方箋料、一部の歯科治療なども含めた医療費の補助を行う。

◎孤独感緩和のためのフリーコールアプリ
アーティストのマックス・ホーキンス、ダニエル・バスキンは自宅待機や隔離を余儀なくされる人々のための孤独感緩和アプリ「Quarantinechat(検疫チャット)」をローンチ。登録、サービスを開始すると、世界中の誰かとランダムにつながり通話ができる。開発は新型コロナウイルス騒動以前に行われていたが、今回の騒動を機に「Quarantinechat」と命名され、人気を博している。

日本国内の動き(最終更新:3月13日 11:30)

◎東京都写真美術館がYouTubeで展示風景を公開
東京都写真美術館は、臨時休館により会場では見ることのできない「日本初期写真史 関東編」展と「写真とファッション」展の様子をYouTube上に公開。「日本初期写真史 関東編」展は担当学芸員・三井圭司による解説も公開されている。

◎東京国立博物館がYouTubeで展示風景を公開
東京国立博物館は、臨時休館により会場では見ることのできない特集展示「おひなさまと日本の人形」と特集「朝鮮王朝の宮廷文化」の展示風景をYouTube上に公開。担当研究員・三田覚之と猪熊兼樹の解説も公開されている。

◎太田記念美術館がソーシャルメディアキャンペーンを開始
太田記念美術館が3月4日よりTwitter上で「#おうちで浮世絵」キャンペーンを展開。「自宅で過ごす方のために、心がなごむカワイイ浮世絵を紹介しています」として、毎日浮世絵を紹介している。これに賛同するかたちで藤沢市藤澤浮世絵館すみだ北斎美術館も同様のキャンペーンを展開中。

働く猫たち。「ほんけほんもとひのだまきわこれでござい」と喋っていますが「ひのだまき」は「しのだまき」のことかと思われます。信田巻きはさまざまな食材を油揚げで巻いたもの。その場でパクッと食べられるのがいいですね。歌川芳藤の作品。太田記念美術館は3/16まで臨時休館のため #おうちで浮世絵pic.twitter.com/RgsqBIlmDT

— 太田記念美術館 (@ukiyoeota) March 9, 2020

◎ピーター・ドイグ展のカタログ(一部)を期間限定公開
臨時休館を受け、東京国立近代美術館で開催中のピーター・ドイグ展のカタログに収録された、小説家・小野正嗣の書き下ろしエッセイと本展企画者の主任研究員・桝田倫広の論考を特別公開。公開期間は3月16日15:00まで(予定)。

◎オンライン映像祭「Films From Nowhere」
映像作家・佐々木友輔とアーティスト・荒木悠がオンライン映像祭「Films From Nowhere」を3月9日〜29日に開催。参加作家は荒木悠、池添俊、内山もにか、海野林太郎、木野彩子、佐々木友輔、地主麻衣子、波田野州平、渡邉ひろ子。Vimeoにて、1000円のレンタル料金支払いから72時間、全作品を視聴できる。ステートメントは関内文庫のページにて公開中。

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