上場企業「新型コロナウイルス影響」調査 (3月13日正午現在)

 「新型コロナウイルス」はWHO(世界保健機関)がパンデミックを宣言し、世界経済への悪影響が深刻化している。3月13日午前の東京株式市場は、ニューヨーク市場の株価下落などを受け、売り注文が殺到。日経平均株価は一時1万7,000円を下回るなど歴史的な値下がり幅を記録した。
 上場企業各社は「決算短信」や「業績予想の修正」、「お知らせ」などで、新型コロナウイルスに関する業績への影響や対応策などを情報開示している。
 3月13日正午までに新型コロナウイルス関連で情報開示した上場企業は525社に達した。また、自主的な開示はないが、東京商工リサーチの独自調査で工場や事業所、店舗の稼働休止など何らかの影響が判明した上場企業は24社あった。合計549社の上場企業が、新型コロナウイルスの対応を明らかにした。
 このうち、新型コロナウイルスにより売上、利益面などの業績面でマイナスの影響を受けた企業は115社。115社のなかで業績予想の修正(78社)による次期見通しの売上減少額は5,172億円、最終利益の減少額は1,232億円にのぼった。

115社が業績へのマイナス影響を開示 売上減少の合計は5,172億円

 情報開示した525社のうち、決算短信や月次売上報告、業績予想の修正などで新型コロナウイルスの影響に言及したのは335社にのぼった。このうち、115社(構成比34.3%)が、売上高や利益の減少など、業績などへのマイナス要因、業績予想の修正要因として新型コロナウイルスの影響を挙げた。
 このほか220社(同65.7%)が「影響の懸念がある」、「影響を精査中」、「影響を確定することは困難として織り込んでいない」とした。終息が依然として見通せず、影響額の確定には時間がかかりそうだ。
 業績予想の修正分のマイナスは合算すると、売上高が5,172億円、最終利益が1,232億円にのぼった。売上高の修正額の最大は(株)エイチ・アイ・エス(TSR企業コード:292203993)で、以下、住友化学(株)(TSR企業コード:570098572)、三菱ロジスネクスト(株)(TSR企業コード:641025076)などが続く。
 また、クルーズ予約サイト運営の(株)ベストワンドットコム(TSR企業コード:296499501)は「クルーズ船の運航中止などの事案が複数発生しており、業績予想の算定ができず一旦未定とする」とし、従来の業績予想の取り下げを発表した。

35社が従業員等の感染を公表

 従業員などに感染者が出たことを公表した企業は35社。この他、感染防止のために在宅勤務などのテレワークや時差出勤の実施など、従業員の働き方の変更を公表した企業が37社あった。実際に感染者が発生した際の企業としての対応策や、BCP(事業継続計画)の整備も問われている。
 一方、ここにきて自社商品やサービスの案内を公表する企業が相次ぎ62社にのぼった。内訳はテレワーク支援などを目的としたサービスツールなどの提供を案内するもの(34社)や、臨時休校中の子どもたちに向けた教育支援コンテンツの無償提供やサービス案内(15社)、新型コロナウイルスの試薬、検査の受託開発など医療支援(13社)がある。関連企業にとってはビジネスチャンスともいえ、積極的にアピールする動きもみられた。

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製造業、サービス業、小売業で7割 消費低迷の影響懸念

 549社の業種別では、製造業が最も多く237社(構成比43.1%)を占めた。サプライチェーンの乱れや人手確保の問題などから正常稼働には至っていないケースも多い。次いで、サービス業79社(同14.3%)、小売業74社(同13.4%)と続き、上位3業種で約7割を占めた。
 政府は3月10日、新型コロナウイルス感染症対策本部で第二弾となる緊急対応策を決めた。このなかで、安倍首相は感染拡大防止策として、大規模イベントの自粛を10日程度継続するよう要請した。
 終息が見えないなか、新型コロナウイルスの感染拡大で、インバウンド需要の消失に加え、消費低迷やイベント自粛などが企業業績に悪影響を及ぼしている。今後も、会合や宴会、旅行のキャンセル等、個人消費の低迷、製造業のサプライチェーンの乱れなどが懸念される。

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