日本が誇るポップマエストロ・杉真理
今日3月14日は、日本が誇るポップマエストロ・杉真理の誕生日。1954年生まれのポスト団塊ということで、今年(2020年)66歳になります。もちろん杉サンまだまだ現役、おめでとうございます!
さて、僕と同性代の人はだいたいそうかもしれないけど(僕は1966年生まれ)、杉真理という名前を意識したのは 1982年にリリースされた『NIAGARA TRIANGLE Vol.2』から。最初は “スギ マリ” って女性かと思いましたよ。普通 “マサミチ” なんて読めないよね。
そう、お馴染み「A面で恋をして」が収録された、大滝詠一、佐野元春とのコラボレーション・アルバム。いやあ、この作品は擦り切れるくらい聴きました。まあ、カセットテープですけどね。だって田舎の高校生ですからお金なんて持ってないんですよ。でも音楽は浴びるように聴きたい。だからレンタルを利用したり、買ったレコードを友達と貸し借りしたり。ほとんどのティーネイジャーはそんなスタイルだったんじゃないかな。
あふれるビートルズ愛、ナイアガラ・トライアングルに収録「Nobody」
で、僕はこのアルバムに入ってる杉サンの「Nobody」って曲が大好きだったんです。大げさじゃなく、毎日聴いてました。うん、初期のビートルズっぽい疾走感あふれるナンバーで、佐野元春と一緒に歌ってるんですよね。1本のマイクで2人が歌ってる姿をイメージしながら、元春がジョンで、杉サンがポール… なんてね。でもってこの曲、たった2分30秒しかないんですけど、その中にロックンロールの魔法が全部詰まってるんです。いや、大袈裟じゃなくてホントに。特に、間奏に入る直前の2人の “キメ” が最高!
傷ついたレコードが
サヨナラをくり返す
君の消えた街は
Nobody's here tonight
oh yeah!
そう、この部分の「oh yeah!」がめちゃくちゃカッコいいんです! 元春が下のパートで杉サンが上かな。もう恐ろしいくらいキマってます。これを聴いちゃうと、歌詞なんかどうだっていい、いや曲ですらどうでもいい、この「oh yeah!」さえあれば全てのことが上手くいくんじゃないかって今でも思います。ロックンロールの世界には百花繚乱の「oh yeah!」がありますが、僕が知りうる限りナンバーワンの「oh yeah!」ですね。
オー イェイ!
ちなみにこの曲、ジョン・レノンが亡くなった直後に作られたようですが、そんなことを知るのもだいぶ後になってから。言われてみれば、ジョン・レノン不在の喪失感を抱きながらニューヨークを彷徨う主人公だったり、ビートルズのホワイトアルバムに収録されている「ジュリア」の冒頭フレーズを引用したBメロの歌詞だったり。
君の喋る言葉の半分は意味がない
⇅
Half of what I say is meaningless
サウンド面でも、途中で三拍子になる「恋を抱きしめよう(We Can Work It Out)」をオマージュしたリズムチェンジや「抱きしめたい(I Want To Hold Your Hand)」を彷彿とさせる構成やエンディングなどなど、マニア心をくすぐる “ネタ” が随所に散りばめられています。
人生が光り輝く瞬間、意味なんてないカッコイイひとこと!
あ、話がちょっと逸れましたね。そんな細かい部分より「oh yeah!」の話に戻りましょう。—— そうそう、音楽を聴いてると、こういった “アガるフレーズ” に出会うことってあるじゃないですか? シャウトというか、感嘆詞というか、意味なんてないんだけど、大げさに言えば人生を生き抜くために必要なひとこと。僕はそんな “光り輝く瞬間” を求めて世界中の歌を聴き続けているのかもしれません。
なーんて書いてたら思い出しました。お薦めの “光り輝く瞬間” をもうひとつ紹介しましょう。それは、T・レックスの名盤『ザ・スライダー』に収録されている「火星のダンスホール(Ballrooms Of Mars)」という耽美的な曲で、マーク・ボランが間奏前に発するひとこと。それは…
ロック!
なんて美しいひとこと!
なんて力強いひとこと!
そして、なんてカッコイイひとこと!
カタリベ: 太田秀樹