改正特措法成立 「やむを得ない」と容認 「権利制限」警戒の声も 長崎県内反応

 新型コロナウイルスの感染拡大に備える改正新型インフルエンザ等対策特別措置法が13日、参院本会議で可決・成立した。県内では、感染防止のため「やむを得ない」と容認する声が聞かれる一方、「市民の権利が制限される」と警戒する意見も出た。
 ほとんどの公立学校で臨時休校が続く県内。「緊急事態」が宣言されると、都道府県知事は学校や興行施設の利用制限などを要請できる。小学4年の息子がいる五島市の自営業石本賢一さん(36)は「休校や外出できない状態が続くと(子どもの)ストレスがたまるし学力低下も心配。緊急事態宣言はできるだけ避けてほしい」と気をもむ。
 3人の子どもがいる長崎市の40代のパート女性は感染防止のため「必要な措置だとは思う」としつつ「世の中に不安な情報ばかりあふれている。症状が回復した人たちの話など安心材料もほしい」と話した。
 「緊急事態」となれば、市民活動もさらに制限される。音楽プロデューサーで佐世保市のライブハウス運営に携わる吉田正志さんは換気扇の24時間運転やマイクの頻繁な消毒など衛生管理に努めていると強調。「命令であれば閉鎖せざるを得ない。ただ、要請であれば、ライブの自粛は佐世保の音楽文化を止めることになるので…」と対応の難しさを口にする。
 観光・経済分野への打撃は必至だ。長崎市のホテル経営者によると、3月の売り上げは前年比7割減の見通し。「休みにした方がまし」な状況が続いている。「今後も外出自粛が続けばますます売り上げが見込めず、先行きのめどが立たない」と頭を抱える。16日からの一部営業再開を決めた佐世保市のハウステンボス。担当者は「政府や自治体の指導に従って営業するしかない。早く終息することを願うばかり」。
 県平和運動センターや県被爆二世の会など県内6団体は13日、緊急事態宣言について「行政権への権力集中を招き、市民の権利を著しく制限する」などとする反対声明を発表。同センターの平野忠司事務局長は「安倍政権はコロナウイルス対策をきっかけに、『緊急事態条項』を含む憲法改正に走ろうとしている」と強い口調で批判した。

© 株式会社長崎新聞社