NPT会議延期 長崎県内反応

NPT再検討会議に合わせて国連本部で披露する予定の合唱組曲「平和の旅へ」を練習する合唱団=12日、長崎市大黒町の県交通会館

 新型コロナウイルス感染拡大の影響で、核拡散防止条約(NPT)再検討会議が1年延期される見通しとなった13日、渡米を予定していた長崎の被爆者や関係者たちからは「残念」と落胆の声が上がった。一方、世界に流行が広がる現状に「仕方ない」と理解を示す声も聞かれた。

 現地で被爆者の証言活動や原爆展開催を予定していた日本原水爆被害者団体協議会(被団協)の田中重光代表委員(79)は「大半の被爆者にとって被爆80年はなく、75年は大きな節目だったので残念だ」と肩を落とした。
 全国被爆二世団体連絡協議会は代表団派遣を予定し、本会議での発言も求めていた。崎山昇会長(61)は「正式な情報を待っている。今のところ行く方向で準備をしている」と戸惑っていた。
 20人を派遣する予定だった核兵器廃絶地球市民長崎集会実行委員会は渡航中止を決定。朝長万左男実行委員長(76)は「ウイルスにどうこう言っても仕方がない。1年延長しても再検討会議自体に影響はない」と冷静に受け止めた。
 長崎市の田上富久市長は「準備をしてきたので残念だが、(延期となれば)もう少し落ち着いた状況で議論できる」と述べた。
 国連本部で合唱する予定だった「平和の旅へ」合唱団は12日の夜に約40人が集まって練習したばかり。渡航を取りやめる方針だが、現地で仲介役を担った関係者から「あらためて歌う機会をつくれるように協力したい」と連絡があったという。佐藤由美子団長(69)は「国連で歌いたいという思いは強い。次の機会に向けて団員も募りたい」と先を見据えた。
 非政府組織(NGO)「核兵器廃絶国際キャンペーン」の川崎哲国際運営委員は「会議開催の有無にかかわらず、核保有国が核軍縮の状況を説明する義務があることに変わりない。文書などで取り組みを報告するべきだ」と指摘。核兵器禁止条約発効に向けて「市民レベルの働き掛けを継続する必要がある」と訴えた。

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