水没被害の収蔵作品を公開 川崎市市民ミュージアム

水没被害後の大矢紀さん作「ニコライ堂」。しわのほか、泥の付着も確認できる

 昨秋の台風19号で川崎市市民ミュージアム(中原区)の地下収蔵庫が水没した問題で、市は13日、被害を受けた主な収蔵作品の名称と画像を初めて公開した。歴史画の大家の作品や市ゆかりの日本画家の作品、ロートレックのポスターなどにカビやしわ、泥の付着などの被害が確認された。

 市はこれまで、寄託者や寄贈者からの了解が得られていないとして作品名の公表を見送っていた。被害品は今後、専門家の意見も聞きながら修復に努める。

 市によると、歴史画の大家・安田靫彦さんの「草薙の剣」は収蔵品の中で保険の評価額が7800万円と最も高い作品。カビやしわが発生していたほか、顔料が落ちやすい状態になっている。川崎市文化賞受賞者で日本画家の大矢紀さんの「ニコライ堂」はしわや顔料の接着力低下のほか、泥の付着も見られた。

 県指定重要文化財の「春日神社の鰐口」、ロートレックのポスター「アンバサドュールのアリスティード・ブリュアン」などの作品も被害に遭った。

 市によると、地下収蔵庫内の22万9千点のうち、62%に当たる14万2700点を既に搬出し、現在応急処置を進めている。古文書など紙資料は劣化を防ぐため、冷凍保存している。4月以降、応急処置を終えた作品について修復作業を本格化させ、6月末までに地下収蔵庫からの搬出を全て終える予定という。

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 その他の主な被害作品は次の通り。

 ▽市重要歴史記念物の古文書「関東下知状」(修復中)▽まどみちお、佐藤惣之助、岡本かの子の文学資料計約1200点(冷凍保管中)▽岡本一平など漫画原画約500点(応急処置中)

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