幻の五輪ランナー伊藤国光さん、故郷・長野でつなぐ聖火

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福山市のJFEスチールの練習場で、聖火リレーへの思いを話す伊藤さん(撮影・井上貴博)

 福山市のJFEスチール競走部監督の伊藤国光さん(65)が東京五輪の聖火ランナーに決まった。瀬古利彦さんや宗茂・猛兄弟らとしのぎを削り、モスクワ五輪1万メートル代表にも選ばれた名ランナー。日本がボイコットしたため出場は幻に終わったが「一生懸命やったので悔いはない。リレーは競技者としての夢をつなぐ場にしたい」と故郷の長野県伊那市で晴れ舞台に立つ。

 聖火走者に加わりたい思いは持っていたという。伊那市の関係者から昨年に内々で打診があり、恩返ししたいと応じた。「1964年東京五輪でアベベ選手の力走を見たのが私の競技生活の原点。妻は何も言わないけど喜んでくれているようです」と笑顔を見せる。

 出番は4月3日。伊那市中心部の2.3キロを13人でリレーする。今年は残念ながら中止になったが、ふくやまマラソンなどにも参加して時折走っているため、健脚はまだまだ健在。伊那市スポーツ課は「故郷で走ってもらえることに感謝しています。福山市や防府市の方々も喜んでくれると思います」と歓迎する。

 伊藤さんは、実業団チーム鐘紡(防府市)の大黒柱として中国駅伝では数々の区間賞を獲得。全日本実業団対抗駅伝でチームに3度の日本一をもたらした。163センチの小柄ながら積極的にレースを引っ張るスタイルで日本の一線級で長らく活躍した。五輪出場が果たせなかったことは陸上界の不思議の一つだ。

 それでも引退後に高岡寿成選手(現カネボウ監督)らを育て、指導者としてアトランタ、シドニー両五輪の現場に立った。専修大陸上競技部監督を経て、2年前から選手18人のJFEを指導する。「地域に愛されるにはまず強くならないと。聖火リレーでは、世界と戦う夢を選手が受け継いでいけるよう願って走りたい」と意欲を見せる。

 いとう・くにみつ 長野県伊那市出身。1973年に上伊那農高から鐘紡入社。日本の一線級で長く活躍し、日本がボイコットした80年モスクワ五輪1万メートルの「幻」の代表。マラソン2時間7分57秒。90年から2012年まで監督。専大を経て18年からJFE競走部監督を務める。