揺れる島の医療 平戸・生月病院 機能見直しへ

島中央部の傾斜地に立つ生月病院=平戸市内

 厚生労働省は診療実績が乏しいなどとして、全国約440の公立・公的病院に再編・統合の議論を要請している。県内でも七つの医療機関が対象となり、このうち平戸市立生月病院は今後、一般病床60床の一部削減や機能転換を図る方針だ。生月島の人口減少や高齢化が要因とみられ、住民からは「やむを得ない」との声も聞かれるが、病院機能は残るのかとの不安も漏れる。

 地元の70代の主婦は週2回、肩や腰のリハビリのため電動車いすで生月病院に通う。片道約30分。以前と比べ患者が減っているのを感じる。「医師や診療科が少ないので車を運転できる人は橋を渡って島外の病院へ行く。病床削減や機能転換はやむを得ないのではないか。でも慣れ親しんだ生月病院で最期を迎えたい」と話す。
 生月病院は島の中央部の傾斜地に立ち、山下雅巳院長を含む内科医4人が常勤。ほかの医療機関から整形外科医が月6回、泌尿(ひにょう)器、循環器、血液内科の各医師がそれぞれ月1回、眼科医が年4回派遣されている。増田雄一事務長によると、一般病床60床はすべて急性期だが、寝たきりの慢性期の患者が90日以上入院しているケースもあるという。病床利用率は年々減少し、2018年度は76.5%。さらに外来患者も減っており、同年度は1日平均111.3人。同年度決算で570万円の赤字に転落し、19年度も赤字の見込みという。
 背景には急速に進む過疎化がある。島の人口は最盛期の1967年は約1万1800人だったが、現在は半分以下の約5300人に減少。65歳以上の高齢者の割合は46.02%に上る。
 島内の約780世帯が加入する「生月病院を存続させる会」の石川隆雄会長は「人口減少や高齢化が進んでいるので生月病院が現状のまま残るとは思わないが、佐世保市などの病院で手術した後、生月病院で回復期を過ごせるようにした方が良いのではないか」と指摘する。
 医師不足も深刻だ。救急告示病院として夜間休日の急患対応が求められるが、当直は4人の常勤医で回している。3月は13回当直の医師もおり、そのまま外来診療に就くことも。さらに今月末には1人が退職予定で、長崎大や医師あっせん業者などに当たっているが、まだ確保できていない。
 石川会長は病床が削減されれば病院機能が失われ診療所になったり急患を受け入れられなくなったりするのではないかと不安を感じている。このため同会などは2月、黒田成彦平戸市長に要望書を提出し、見解をただした。市長は「実態に合った機能に改革する必要がある。そのために何ができるか病院、住民と情報共有を図りたい」と答えたという。
 80年に建てられた病院は老朽化が進み、建て替えるとしても適正規模の見極めが必要。島の将来にも関わるため、住民も巻き込んだ議論が求められる。

生月病院の将来像などについて議論した佐世保県北区域の地域医療構想調整会議=2月3日、北松佐々町

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