【記者の目】MLB開幕遅れでエンゼルスと大谷はどうなる? キャンプを総括

エンゼルス・大谷翔平【写真:Getty Images】

5月以降の開幕となれば二刀流で復活、開幕ローテはヒーニー、バンディ、テヘランら

 続々と道具やトレーニング機器が米アリゾナ州テンピのキャップ地から運ばれていった。新型コロナウイルスの感染防止のために選手たちには、キャンプ地に残って調整するか、本拠地のアナハイムに戻るか、自宅に戻るかの選択権を与えられていた。球団広報によると大谷もアナハイムに戻るなどほとんどの選手、スタッフがキャンプ地より離れたという。

 開幕時期は不透明で5月、6月まで長引く可能性も十分にある。アメリカでは今ではトップニュースで新型コロナウイルスの報道がされているが、一時は“広がらないんじゃないか”という論調もあった。地元のロサンゼルスで死者が出て、もう市民が最も気にする話題となった。“見えるもの”だったらまだしも、収束する目処も立たない。スーパーマーケットからは商品が消え、戦々恐々とする日々が続いている。

 そんな状況で野球をするのは難しい。こればかりは仕方ないことだ。ファンにとってみれば非常に寂しい状況だが、選手たちは開幕することを信じ、ファンの期待に応えられるように準備をしていくしかない。開幕5月、6月になった時、エンゼルスがどんな状態でスタートを切れるのか。

 まずは二刀流復帰へ向けて、準備を進めている大谷。ブルペンでも投球練習を再開し、投手として復活するのは5月中旬とされていたことを考えると、先発ローテーションに入りながら、打線でもチームをけん引するという状況をスタートから見ることができる。

 エンゼルスの先発投手で現在、ローテーションが確定的だったのは開幕投手を任されそうなのは28歳左腕・ヒーニー。昨季は18登板で4勝6敗、防御率4.91だった。そして、オリオールズから移籍の右腕、バンディとブレーブスからFAとなって、加入したオールスター2度出場のテヘランと続く。

 昨季5勝のキャニングが右肘の不調を訴えて、少なくても今のところ手術をするかどうかという状況になっている。手術を回避しようとしているが、今のところは3枚。残りの2つの枠を若手のピータース、サンドバル、スアレス、バリアらが争う。また、昨年8勝も膝を故障したペーニャが帰ってこらるかどうかもポイント。ペーニャにとっても、開幕が伸びたことは復帰時期という点では悪いことではない。大谷が投手で復活した場合、1週間に1回しか投げられないので、先発は6枚になるかもしれない。ヒーニー、バンディ、テヘランに続き、大谷、ペーニャ、争いに勝った若手1人となれば、心強い。

オープン戦打率は1割台で本塁打ゼロでも心配はいらない

 気になるバッティングの方は……というと、オープン戦では本塁打もなく、9試合に出場して、19打数2安打1打点の打率.105だった。ここには全く心配する必要はないと見る。試行錯誤しているのが、取り組みからも見て取れるからだ。シーズン中だって波があり、少ない時間の中でアジャストしてきた。その波にしっかりと対応できるよう「フォームをしっかり確立したい」と大谷自身も話しており、その時間にこのオープン戦を充てている。ヒットが出なかったり、三振が多かったりしているが、そこは心配は無いのかなと思っている。

 2年前もオープン戦で1割台で開幕を迎えていた。なかなか打てなくて、日本のメディアもファンも“これは難しいのかな”なんて心配する声もあった。しかし、監督やコーチも取材を受けるたびに“黙れ”みたいな雰囲気、顔をするなど、大谷がしっかりと対応するということを強調していた。問題ない、オープン戦でいくら打っても関係ない、と広報やスタッフも雑談レベルでも自信満々に話していたことを思い出す。大谷の場合は、日本ハムの時代も春のキャンプ、オープン戦ではさほど打っていなかったとも聞いた。今キャンプも打率は上がらなかったが、打撃練習でもものすごい打球を飛ばしているし、「今は信じなさい。必ず打つから」と今季から指揮を執るマドン監督も言っていた。

 打撃もそういう意味では、一番良いものを見つけるまでは、この期間を有効に使うことができる。開幕が6週間以上伸びるようであれば、より高いレベルでの復活になるだろう。

 ただ、キャンプの中止に、開幕延期、世界的に死者や感染者が広まるこの事態は各球団にさまざまな影響が及んでいる。滞在しているアメリカでもマスクや消毒液も「一人一個」と張り紙をされていても陳列されていない状態で虚しく映る。選手、スタッフ、ファンが安全に野球を見られる日が一日でも早く来る日を願っている。(盆子原浩二 / Koji Bonkobara)

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