いよいよ税務当局が動き出した?仮想通貨で儲かった人が今、注意するべきことは税金

ちょっと前の話になりますが、ビットコインなど仮想通貨を含む暗号資産の取引で「億り人」になった人が話題になりました。でも、「儲かった!」と喜んでばかりはいられません。あなた、その取引によって得られた利益を、ちゃんと申告しましたか?


暗号資産の売買益 申告しましたか?

2018年は「もう当分、値上がりすることはない」などと悲観的なムードで一杯だった暗号資産のマーケットですが、昨年は想定外の値上がりとなりました。ビットコインの価格を見ると、昨年2月半ばまでは1BTC=40万円を割り込む水準だったのが、6月26日には瞬間高値で139万7000円をつけました。安値で仕込んでいれば資産価値は3倍以上です。

ちなみに2019年12月末時点の価格は1BTC=79万2000円なので、6月の瞬間高値に比べれば値下がりしていますが、それでも安値から見た資産価値は倍になっています。

なかには昨年、高値を付けるところで上手に売り抜けられた人もいるでしょう。そういう方に改めて確認したいのは、売買によって得た利益についてきちんと申告しましたか?ということです。

株式やFXの売買で得た利益に課税されることは知っているのに、なぜか暗号資産の売買益については「申告しなくてもいいんでしょ」と思い込んでいる人が結構います。暗号資産の課税関係に詳しい税理士に聞いたところ、昨年の夏あたりから税務調査に入られている人がポツポツ増えてきたそうです。暗号資産の売買で儲かった経験を持っている人は、金額の多寡に関係なく、この事実を重く受け止めるべきです。

利益の多寡に関係なく申告手続きを

幸いにも2020年の確定申告は、期日が3月16日から4月16日に延期されました。これを機に、昨年の売買で利益を得ている人は、今からでも十分に間に合いますから、申告の手続きをしましょう。

ちなみに4月16日期限の確定申告で処理しなければならないのは、2019年1月1日から12月31日までの間にビットコインをはじめとする暗号資産を売買したことで得られた利益です。全く売買せず、含み益のまま年を越した場合は基本的に課税されません。

たとえば2019年2月に1BTC=40万円で買ったビットコインを、2020年3月に1BTC=80万円で売却して得た40万円の売買益は、2021年3月16日を期日とする確定申告の際に、2020年中に得た利益として申告する形になります。

なお、暗号資産の売買で得た利益は「雑所得」に分類されます。雑所得とは、たとえばアフィリエイト収入、インターネットオークションで得た収入、原稿料、講演料、印税などが含まれています。原則として雑所得は課税対象ですが、暗号資産の売買で得た利益も含め、雑所得が総額で20万円以下なら、確定申告不要制度によって申告する必要はありません。つまり税金を納めずに済むのです。

このように言うと、「大きく儲かったわけじゃないから申告しなくてもいいか」と考える人もいると思います。もちろん確定申告不要制度の範囲内であれば申告せずに済みますが、たとえば暗号資産の売買で得た利益が20万円を超えるのであれば申告しなければなりません。

この部分については、税務署のお目こぼしはないと思っておいた方が良さそうです。後から追徴課税を受けると税率が高くなるので、儲けの額に心当たりがある人は、とにかく4月16日までに申告を済ませることです。

税務当局は個人の売買情報を把握している

ここまで言っても、「たかだか30万円程度の利益で、わざわざ申告するのは面倒だし、30万円なんて小さな収入、税務署も把握していないはず」なんてタカを括っている人もいると思います。

でも、実のところ税務署は、皆さんが暗号資産を売買して得た利益の情報を、ほとんど把握しているはずです。というのも、国内の暗号資産取引所を通じて行われた取引の情報はすべて、税当局に報告されている可能性が高いからです。

「仮想通貨で儲けたのは2017年のことで、あれから2年以上経過しているから、もう逃げ切れただろう」などと考えているとしたら、恐らく甘いかも知れません。というのも税当局は今、各暗号資産取引所から寄せられている膨大な顧客取引データを付け合わせて利益の額を計算しているため、その処理に時間が掛かっていると思われるからです。

つまり遅かれ早かれ、確定申告をしていなかった人には税務署から連絡が行くでしょう。それも2019年分だけでなく2017年分の利益も調査の対象になっているはずなので、2017年にビットコインをはじめとする暗号資産の価格が急騰して莫大な売買益を得た人は、延滞税も含めて莫大な額の税金を納めなければなりません。

キャッシュ(現金)、手元にありますか?

何よりも怖いのは、2017年12月の高値でビットコインを売却した後、その売却代金でイーサリアムやリップルといった他の暗号資産を買っているケースです。2018年はビットコインだけでなく、他の暗号資産の価格も大きく下げました。結果、2017年の上昇相場で大儲けしたものの、2018年の下げ相場で、儲けの大半を失っている恐れがあります。

もちろん、それだけなら自分が耐えれば良いだけなのですが、2017年12月の高値で売却して得た利益に対する課税が生じることを忘れてはいけません。もし他の暗号資産を全力買いしてキャッシュが手元に無かったとしたら、今の価格で売却できたとしても、納税額に及ばない恐れがあります。

しかも所得税や住民税などの税金は、自己破産しても納税自体が免除されることはありません。あまりにも悪質だと、脱税と見なされて刑事罰の対象になる恐れもあります。

もはや手遅れという人もいるかも知れませんが、過去の利益も含めて納税できる人は、税務署から指摘される前に、自ら進んで納税することをお勧めします。

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