前回は、飲食業の法律的なハードルをローリスクで乗り越える方法として、シェアキッチンやレンタルカフェなどの利用についてお話ししました。今回からは、そんな場所の探し方、利用の仕方、はじめるに当たって準備することなどについてお話しします。
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「食」への想いとウェイトレス
私たちの週末カフェ「天使の時間」はこの7年間で、喫茶店、お菓子屋さん、パン屋さん(蒸しパンですが)、カフェなど、さまざまなスタイルに移り変わってきました。なので、週末パン屋さんに限らず、いろいろな飲食業でプチ起業してみたい人の参考になると思います。まずはシェアキッチン、レンタルカフェでプチ起業したきっかけからお話しします。
私は「大人アトピー」をもっています。アトピー性皮膚炎と言えば、乳幼児のアレルギーというイメージをもっている人が多いかもしれませんが、成人してから症状がひどくなるのが大人アトピー。病院に行くとステロイドなどの強い薬で症状を抑える治療をされますが、体の中から治していきたかった私は、「食」に興味をもちました。
マクロビオティックや食養生について専門書をたくさん読んだり、料理教室やセミナーを受講したりして、食事療法を実践しています。アトピーやアレルギーのお子さんをもつお母さんたちの会を通じて、料理教室やお菓子教室を開催したりもしてきました。
そんな私の子どものころからの夢は「おみせやさん」。小さいころはお豆腐屋さんになりたい、と思っていました。水槽からお豆腐をすくって渡しながら、お客さんとコミュニケーションしているのがなんだか楽しそうに思えたんです。
大学時代の4年間は、喫茶店のホール担当のアルバイトをしていました。昔の言い方なら「ウェイトレス」という仕事です。観光地にある大きなお店でしたら、たくさんのいろいろなお客さんがきて忙しかったのですが、「人が集まる喫茶店という場所っていいな」と思うようになりました。
大人アトピーをきっかけにした「食」への想いと、ウェイトレス経験をきっかけにした喫茶店という「場」への想い。この2つが、いつか「カフェ」をやってみたい、という夢を形作りました。でも、自分のお店をもつのは簡単ではありません。お金もすごくかかるし、失敗したらどうしよう、という不安もあるし。
「お店を貸してくれて『好きに使っていいよ』と言ってくれる人、いないかなあ」
なんて夢のようなことを考えていたとき、偶然見つけたのが、今週末カフェをやっている「コラボカフェ」だったのです。
自分がなにをやりたいのか、それが「志」
プチ起業のノウハウをお伝えするつもりだったのが、なんだか自分語りになってしまいました。でも、週末カフェを7年間続けてきてわかったんです。飲食で起業して、長く続けていくのには「志」が大切なんだ、ということが。
パン屋さんでもお菓子屋さんでもカフェでも、飲食業はそんなに儲かるものではありません。単価は安いですし、いいものを提供しようとすれば原価は高いですし、お店はたくさんあるので、競争も厳しいのです。なので「志」がないと続かないし、いいものを提供できないし、お客様もついてくれません。
私の志は、アレルギーのある子どもにおいしくて美しいお菓子をつくって食べてもらって笑顔になってもらうこと。そのために、ナチュラルな食材だけを使ったお菓子や料理を提供すること。
志を定めること。実はこれが、週末プチ起業をはじめるにあたって、一番大切な準備だと思います。私が週末カフェをはじめた7年前、実はそこまで明確に「志」を定めていたわけではありませんでした。なのでなかなかお客様が来なかったり、コラボカフェのお隣にあるコラボ食堂にばかりお客様が入ったりしたとき、
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どうしてうちには来ないんだろう
自然食なんて、どうせ人気が無いんだ
なんて落ち込んだり、心が揺れたりしたことがありました。逆にお客さんがたくさんきて忙しすぎると、
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こんなにバタバタするためにカフェをやりたかったわけじゃない
なんて贅沢なことを考えたりして。そんなことがあるたびに、
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どうして私は、カフェをやっているんだろう
と何度も思ったんですね。それを繰り返しながら、だんだんと自分の「志」が定まっていった感じです。
志が定まったら場所探し
志が定まったら、場所探しです。自分の志にマッチした場所を探しましょう。私が偶然見つけたコラボカフェは、天然素材をふんだんに使った木の空間。自然食をやりたいと思っていた私の想いを実現するのにピッタリの場所でした。
7年前と違って、今はシェアキッチン、レンタルカフェを提供している施設がたくさんあります。インターネットで「シェアキッチン」「レンタルキッチン」「レンタルカフェ」「コラボカフェ」と自分の住んでいる地域名で検索してみてください。いろいろな施設がでてくると思います。そんな中から、自分の志にマッチしたところを選んでください。
お店にしろ工房にしろ、長く続けるならば自分の志、自分がつくるものと雰囲気があっていることが大事です。私は人が集まる「場」としてカフェという空間が好きなので、カフェでお菓子や料理を提供するというスタイルでやっていますが、もっと広く通販などでお菓子やパンを提供したいという人は、工房というスタイルもよいと思います。
これは!という場所が見つかったら、とにかくそこに行ってみることです。周辺の雰囲気や施設の外観などが気に入ったら、思い切って中に入ってみましょう。シェアキッチンやレンタルカフェには、利用料や使用条件が明記された資料が用意されていますから、まずはその資料をもらいに行くだけでもかまいません。
レンタルカフェだったら、そこのお客として入って利用してみるのもよいです。店内の雰囲気はもちろん、そこを借りて営業している人がどんなものを提供しているか、どんな感じの人なのかを直に見ることで、自分がやれそうかを確認できます。
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ここでやってみたいな
そんなふうに気持ちが固まってきたら、いよいよ施設の担当者にお話を聞いてみましょう。
自分の想いを語ろう
シェアキッチンやレンタルカフェを運営している施設側にも、いろいろな想いがあります。施設側の担当者とお話しするときには、自分がやりたいと思っていることを話すのと同時に、そのキッチンやカフェがどんな思いで運営されているかをしっかりと聞くのも大切です。
いろいろな人が借りる場所です。集まるのは施設の想いに共感した人たち。カフェならば、毎日のようにオーナーが代わるお店になりますから、同じような想いでお菓子や料理を提供しているところでないと、自分がオーナーとして入る時だけ浮いた存在になりかねません。
自分の志と、シェアキッチン・レンタルカフェの雰囲気。相性がピッタリ、と感じられたら、すぐに日取りを決めて、はじめての営業にチャレンジしましょう!
次回からは、はじめてのカフェ営業に向けての準備と実際の運営について説明します。お楽しみに!
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