『もみの家』 殻を破っていく少女の成長をみずみずしく描く

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 デビュー作『真白の恋』が高く評価された新鋭・坂本欣弘の第2作だ。再び、生まれ育った富山の美しい風景をバックに、少女の成長をみずみずしいタッチで活写する。不登校が原因で自立支援施設・もみの家に入所した16歳の彩花。同じように問題を抱える若者たちや地域の人々との交流を通じ、少女は稲のもみが固い殻を破るように少しずつ閉ざしていた心を開いてゆく…。

 主演は、『志乃ちゃんは自分の名前が言えない』『幼な子われらに生まれ』の若き実力派・南沙良。撮影時、彩花と同じ16歳だった彼女の生々しいたたずまいも大きな見どころだ。本作は、不登校という現代社会が抱える問題を扱っていながらも、『志乃ちゃん~』がそうだったように、骨組みはあくまでも王道の成長物語。しかも、四季の移ろいを盛り込むために1年がかりで撮影されており、そのことが情感あふれる力強い映像だけでなく、時にほっこりさせる詩情までもたらしているのだ。坂本監督による、作り込んでいながらビビッドな空気感と、緩急を心得た語り口にうならされる。

 その上、南自身の成長の記録(何せ16歳。その1年間は短くない!)という副産物まで生んでいる本作は、岩井俊二のような天才的な、つまりは時に鼻に付くような才気とはまた違う、大勢の若者たちの心に着実に響く普遍性を感じさせるのだ。★★★★★(外山真也)

監督:坂本欣弘

出演:南沙良、緒形直人、田中美里

3月20日(金)から全国順次公開(富山県では先行公開中)