あなどれないCX-8の悪路走破性
意外にも高いオフロード性能を誇るマツダ CX-8。そのオフロード性能を語る前にCX-8について振り返ってみましょう。
CX-8はマツダの国内SUVラインナップにおける最上位モデルで、日本には導入されていないCX-9をベースに開発されたもの。デザインは魂動デザインをまとい、エレガントさとともに力強さが感じられ、インテリアも一部メッキの加飾を使いながら最上位モデルらしい質感の高さを表現しています。
3列目シートの居住性は、確かに2列目と比較すれば若干狭さを感じますが、USB端子なども装備されるなど居住性は重視されており、1~2時間程度のドライブであれば十分に快適に過ごすことが出来るでしょう。
オンロード性能も他のマツダ車同様、走る歓びを追及。真っ直ぐ座ることが出来るドライビングポジションなどのパッケージングから、お馴染みとなったGVC+などの走行安定性も十分に担保されています。
そして特筆すべきはオフロード性能の高さです。最低地上高を200mmと他の日本車のSUVと同レベルです。また、昨年末にはオフロードトラクションアシストが追加されました。
これは、片輪が浮くような状況に陥った際、このシステムをオンにすると、AWDとトラクションコントロールが協調制御し、AWDが積極的にトルク配分を行って車輪のスリップを抑制。もし万が一、車輪がスリップした場合には強いブレーキを空転輪にかけることによって、接地輪にしっかりと駆動力を伝達して脱出することが可能となるわけです。実際にそういったシーンで試乗したのですが、その威力は相当なものでした。
ディスカバリースポーツは水の中も走れる?
さて、ランドローバーディスカバリースポーツは、プレミアム・コンパクト SUVとして2014年にデビュー。同社のエントリーモデルに位置付けられています。
そのデザインはイヴォークなど他のランドローバー/レンジローバー車と共通で、一目でそのファミリーと分かり、インテリアもふんだんにレザーが使われていて、その雰囲気ははるかに上級クラスの雰囲気も味わえるもの。
グレード:HSE Luxury
筆者:伊藤 梓
残念ながら3列目シートは5+2シートというようにエマージェンシーに近いものですが、近距離程度であれば子どもたちを乗せてお出かけも可能です。
そして何よりもランドローバーファミリーですから、悪路走破性が非常に高いことは容易に想像がつくでしょう。カタログを眺めていると様々なスペック以外に渡河水深というものが記載されています。
これはどの程度の水深までなら走破できるかを表しており、ディスカバリースポーツは600mmとされています。最近のゲリラ豪雨時に目の前の水深が60cmを下回っていれば、十分に走行は可能ということなのです。
甲乙つけがたいスペック比較
それぞれの特徴が分かったところで、この2台のスペックを比較してみましょう。
ボディサイズはCX-8よりディスカバリースポーツの方が一回り小さく、エンジンに関しても同様ですが、その出力やトルクはほぼイコールといっていいでしょう。ただし、ディスカバリースポーツのディーゼルの最大トルクが1750rpmから発揮できるのは、特に悪路を走行する時。その際にはきっと心強いでしょう。
一方でCX-8はそのサイズを活かして室内空間が広くとられていますので、居住性に関しては3列目も含めてより快適です。燃費もかなりの差がついており、オンロードではより遠くまで走ることが出来ます。
実用を取るかペットにするか
あえておススメしたいランドローバー特有の魅力とは
では、この2台をどう評価するかです。正直にいうとCX-8の魅力は非常に高いもので、個人的な好みでいえば、魂動デザインを纏ったCX-8のデザインはディスカバリースポーツよりもはるかに魅力的。悪路走破性も普通のドライバーが悪路を走るレベルでは全く問題なく、安全運転支援システムもより充実しています。
では、なぜディスカバリースポーツを勧めたいのか。それはインテリアです。CX-8も質感が高いのですが、ディスカバリースポーツに乗り込んでステアリングを握った時に感じる上質な雰囲気はCX-8ではあまり感じられないものなのです。特にインパネ周りにまで張り巡らされているレザーは“ちょっといいクルマ”に乗っている雰囲気を醸し出しています。
また、インパネやドア回りの水平基調のデザインは、オフロードでの自車の傾き具合を測る指標にもなるように考えられており、出目が感じられます。
そしてもうひとつ、オフロードの走破性も大きな魅力です。前述したとおりCX-8も高い悪路走破性を備えていますが、さすがに渡河浸水までは明記されておらず、ダウンヒルで有効なヒルディセントコントロールも備わりません。
ブレーキペダルでのロックコントロールが非常にやりやすいので必要ないともいえますが、かなりのぬかるみの中でのダウンヒルには有効です。そう、そこには大きな“安心感”が備わっているのです。
CX-8はとても魅力的な“実用車”ですが、誰かとシェアしての所有でも十分満足できる1台ともいえます。しかし、ディスカバリースポーツは自分で所有したいと思わせる1台、イギリス人にとってのペットのような、ほかには代えがたい魅力を備える存在なのです。
[筆者:内田俊一]