観光型MaaS「Izuko」実証成果を発表 脱アプリで利用拡大に成功

東急株式会社、東日本旅客鉄道株式会社(JR東日本)、株式会社ジェイアール東日本企画は、静岡県の伊豆エリアで観光型MaaS「Izuko」の実証実験を2019年度に実施。そのうち、2019年12月1日から2020年3月10日にかけて行った「Phase2」実証の結果や今後の課題について発表を行った。Izukoは鉄道・バス・AIオンデマンド交通・レンタサイクル・観光施設などをスマートフォン上で検索・予約・決済し、目的地までのシームレスな移動を行う統合型サービス。

【2020.03.17更新 トップ画像の変更、資料の追加】

■Phase2 は 脱アプリで利用拡大に成功

2019年4月から行った Phase1 の実証では目標を上回るアプリのダウンロードがあった。その一方で、アプリの操作性については多くの課題を残し、ダウンロード後のデジタルチケット利用などについては伸び悩んだという。

これを踏まえて、Phase2ではスマホアプリからWebブラウザでのサービス提供へと切り替えを行った。Webサービス化することで、利用者の操作性向上や新たなサービス追加のほか、 価格設定の柔軟な変更等といった提供側の運用についての大幅な改善などを目指した。

東急らの発表によると、Phase2では、前回の約5倍にあたる5,121枚のデジタルチケット販売を達成(前回は1,045枚)。特に、今回からサービスエリアに加わった、JR伊東線(熱海駅~伊東駅)を含むデジタルフリーパスなどが人気を集めたという。「利用可能な観光施設も増加し、複数枚購入するユーザーも増えた」ことを一因に指摘し、サービスエリア拡大・メニュー拡充を行った結果、より多くの利用客のニーズに合致したと分析している。

また、下田市内を運行するAIオンデマンド乗合い交通は、Phase2から、1日乗り放題400円で有料化に踏み切った。にもかかわらず、その後の利用客数や1人あたりの乗車回数は1.3倍前後に増加。周辺観光施設のデジタルパス販売数も倍増した。運行エリアの拡大や、乗降場所に観光施設や宿泊施設などを加えたことで、下田地区の観光客の周遊促進につながったという。

そのほか、画面デザインや操作性の改善により、操作方法に関する問合せの数も大幅に減少。前回と比較して、7分の1以下の水準まで下がったという(コールセンターへの入電数の比較)。

一方で、解決すべき課題については、商品の事前購入対応、決済方法の多様化、ログイン画面などの操作性向上、観光客のニーズを踏まえた商品設計の必要性や、周遊範囲が東伊豆に偏っていることなどを挙げている。

■国内の観光型MaaS事例では圧倒的な利用規模に

今回の実証実験では、2019年度の Phase1とPhase2 を通じて、定量目標「ダウンロード2万件、デジタルパス類販売1万枚」を、定性目標「シームレスな移動実現による周遊効果/交通・観光事業のスマート化/地域課題解決」を掲げていたという。

定量目標については、Phase1でダウンロード2万件超えを達成。デジタルの販売枚数もPhase1・2の合計で6,166枚に達した。東急らはこの実績について、「(後者は)目標に届かなかったものの国内の観光型MaaSの事例の中では圧倒的な利用規模となった」としている。

定性目標については、下田市内のAIオンデマンド交通の事例を挙げ、交通機関や観光施設のデジタルチケットが一定数利用されていること。また、新たな周遊の動きも出始めていることから、一定の実現が図れているとの認識を示している。

今後は、2度にわたる実証実験で明らかになった課題などを踏まえ、社会実装に向けて取り組みを進めていくという。東急らの発表によると、最終的な実証実験を2020年秋以降に実施する予定だ。

Izuko Phase2実証での販売数一覧表

■発表資料

・登録ユーザー情報と各種商品の購買傾向(左)/UIの改善:アプリからWeb ブラウザに変更(右)

・デジタルフリーパス詳細(左が既存、右がPhase2で追加されたもの)

・デジタルパス詳細:観光施設5種類と、交通系2種類が新規追加

・オンデマンド乗合交通詳細

【掲載画像・資料:東急株式会社、東日本旅客鉄道株式会社(JR東日本)のプレスリリースより】

東急プレスリリース:

https://www.tokyu.co.jp/image/news/pdf/20200317-1.pdf

JR東日本プレスリリース:

https://www.jreast.co.jp/press/2019/20200317_ho01.pdf

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