<大ヒット盤> 大原櫻子『Passion』 孤独を歌い上げるラスト曲。鬼気迫る

大原櫻子『Passion』

 近年は舞台での活躍が目覚ましい96年生まれの女性歌手のオリジナル4th。10代の頃は亀田誠治プロデュースのもと、ギターを弾き語る姿が印象的だったが、本作では、自身が作詞・作曲に関わったものは『Special Lovers』の1曲のみ。その分、随分と音楽の幅も広がった。

 全12曲は、TWICE風にキュートなポップスの『Amazing!』、海外でも流行の緩いビートで、綺麗に伸びる裏声が印象的な『Special Lovers』、そのままいきものがかりが歌いそうな温かいラブソングの『きらきらきら』、中島美嘉やJUJUが歌いそうな静かなバラードの『コントラスト』など、まるで一人フェス状態。彼女が舞台で様々な役を演じるように、歌手としても何でも歌いたいという情熱(Passion)が全体をまとめている。

 出色はラストの『電話出て』だろうか。作詞:一青窈、作曲・編曲:丸谷マナブのシリアスタッチのミディアム・バラードで、電話を無視され続けて孤独を抱える「僕」を、大原が鬼気迫るように歌い上げる。今後、この路線をさらに深めていくのか大いに期待する。

 「昔が良かった」と批判したくなる人には、ウクレレでゆったりと歌う『By Your Side』で一度リラックスしてから全体を楽しむと良いかも。本作から、一人ですべてを成し遂げるよりも、周囲の協力を得ることで、想像すらしなかった世界が見えてくることも学ぶはず。

(ビクター・通常盤 3000円+税)=臼井孝

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