日本開催、声援を力に変えられるか 精神力が鍵握るライフル射撃

射撃のアジア選手権女子ライフル3姿勢で3位に入り、東京五輪代表に決まった平田しおり=2019年11月9日、ドーハ(共同)

 今夏の東京五輪では、日本で国際大会が開催される機会がめったにない競技が多く実施される予定だ。

 射撃もそのような競技の一つだ。銃刀法で銃の所持や使用が厳しく制限される日本では“激レア”な大会といえるだろう。そんな東京五輪で射撃の取材を担当することになり、昨年11月に国際大会を一足先に経験してきた。

 ドーハで行われた射撃のアジア選手権。ライフル射撃では、この大会で男女のライフル3姿勢の東京五輪代表が決まった。

 ライフル3姿勢はその名の通り、片膝をついてライフル銃を構える膝射、うつぶせで構える伏射、立って構える立射の三つの姿勢で50メートル先の標的を撃って正確さを争う種目だ。

 決勝に進む上位8人を決める予選では、各姿勢40発ずつの計120発を2時間45分かけて撃ち、精神的にも体力的にもハードな競技として知られている。

 この種目で目覚ましい活躍を見せたのが、女子で20歳の平田しおり(明大)だ。

 前評判では実績のある他の選手の方が有力視されていたが、全体7位、日本人トップの成績で予選を通過した。決勝でも一時トップに立つなど上位争いを繰り広げ、銅メダルを獲得した。

 銃刀法の関係で、日本ではこの種目で使用するライフル銃は18歳以上でないと扱うことができない。エアライフルではワールドカップ(W杯)で入賞するなど実績があった平田だが、ライフル3姿勢は撃ち始めて2年足らず。急成長を遂げての五輪代表権獲得だった。

 平田は試合後「ここまで残れるとは思わなかった」と、自分でも驚いた様子だった。しかし、結果を出せたのは決して偶然ではない。

 選手強化を担当する協会関係者によると、好成績を残せたのは精神面のコントロールがうまくいったことが大きかったという。

 実際、本人も緊張はしなかったと言い「自分のリズムで落ち着いてやれた」と振り返った。

 ミリ単位の精度で点数を争う選手たちにとっては、緊張によるわずかな体の震えや呼吸の乱れが命取りになるという。

 実際にこの大会の取材中にも、予選で抜群の安定感を見せていた選手が、メダル獲得へのプレッシャーがかかる決勝で、大きく狙いを外す場面が何度も見られ、精神力が勝負の鍵を握るスポーツであるということを強く実感させられた。

 東京五輪の開幕まで残り約4カ月。ライフル射撃では、3月末にエアライフルとエアピストルの男女、男子ラピッドファイアピストル、女子ピストルの最終選考が行われ、遅くとも4月には全種目の代表が出そろう。

 選ばれた選手は注目され、大きな期待がかけられることになる。

 大会本番ではどれだけの日本人が射撃の会場に足を運ぶのかは予測できないが、これまでの海外遠征では経験したことのないほどの声援を受けるに違いない。

 この声援を力に変えて結果につなげられるかどうか。やはりここでも精神力が問われることになる。

小田原 知生(おだはら・ともお)プロフィル

2017年に共同通信に入社し、宇都宮支局で警察、司法などを取材。19年5月から運動部。東京五輪の取材では射撃(ライフル、クレー)とバスケットボールを担当している。宮崎県出身。

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