離島留学生寮で奈留高存続を 学習塾、交流スペース併設 しまなび協議会 整備への寄付募る

奈留しまなび協議会が、学生寮兼コミュニティスペースとして改装する予定の空き家=五島市奈留町

 少子化が続く五島市奈留島唯一の高校で、島外出身の「離島留学生」も通う県立奈留高。少人数での英語教育に定評があるが、留学生が暮らすホームステイ先の確保が難しく、学校存続を危ぶむ声もある。島民有志でつくる「奈留しまなび協議会」(山口幹生会長)は留学生を安定的に受け入れる学生寮を整備しようと寄付を募っている。2021年3月オープンを目指しており、寮には、学習塾や多世代交流ができるスペースも設ける考えだ。

 奈留高の離島留学制度は18年度に始まった。19年度の全校生徒27人のうち12人が留学生。同協議会によると、初年度入学した留学生は9人(現在は6人)、19年度は7人(同6人)で、20年度は新たに4人が留学してくる。島内の一般家庭から通学するが、ホームステイ家庭は慢性的に不足。20年度分は合格者が決まった後も、男子1人を受け入れる家庭が一時見つからないなど状況は深刻化していた。
 「地元出身の子どもも減り続ける中、このままでは高校がなくなる」。そう危機感を抱いたのが、市地域おこし協力隊として奈留島の教育支援に取り組む上條貴子さんと、集落支援員の鎌田智美さん。地域を巻き込んだ活動にしようと、島中心部の浦町内会長を務める山口さんにも、学生寮設立に向けた協力を求めた。
 「頑張っている2人の姿を見て、先人たちがつくった高校を無くしてはいけないと、あらためて感じた」と山口さん。他県の事例視察などにも取り組み、島内の4町内会や町民有志らが昨年12月、学生寮などの設立や運営を担う「奈留しまなび協議会」を設立した。
 学生寮は、奈留町浦の宿輪医院前にある古民家を譲り受けて改修。「しまなび舎(や)」と名付け、当面は男子留学生8人程度が共同生活を送れるようにする。小中高生向けの学習塾や、独居高齢者や子育て中の親らが気軽に集えるコミュニティースペースも設ける。また市の協力を得て、寮や塾の運営に当たる若者「島ナビ隊」を島外から募集。寮近くに同隊が暮らすシェアハウスを設ける。
 一連の改修経費は約1500万円を見込む。同協議会は、1月からチラシを配るなどして市役所支所窓口や口座で寄付金を募り、2月からはインターネット上で不特定多数の人から資金提供を受けるクラウドファンディング(サイトはFAAVO長崎)を実施。現時点で420万円余りが集まり、4月末まで続ける。
 上條さんは「たくさんの寄付に感謝したい。お金が集まるだけでなく、活動への理解も日に日に深まっていると感じる」と感謝している。問い合わせは同協議会事務局(奈留支所内)に電話(0959.64.3203)か、メール(shimanabikyogikai76@gmail.com)で。

奈留しまなび協議会の(右から)上條さん、山口会長、鎌田さん=五島市奈留町

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