新型コロナで想定外の就職活動 学生ら戸惑い 説明会の中止やウェブでの面接など

新型コロナウイルスの感染拡大を受け、企業説明会の中止を知らせる張り紙=長崎市、長崎大

 新型コロナウイルスの感染拡大への懸念が広がる中、来春卒業予定の大学生らの就職活動は、企業説明会の中止やウェブでの面接など例年と異なる形でスタートしている。「学生と会う機会が失われる」「面接官に熱意は伝わったのか」-。企業や学生からは戸惑いの声が漏れる。“コロナショック”の影響で、これから本格化する長崎県内春闘の労使交渉の行方にも不透明感が漂っている。
 「大学では何を学びましたか」。リクルートスーツを着た長崎大の男子学生(21)に、パソコン画面の向こうから企業の面接官が質問してきた。この学生が採用面接を受けたのは、長崎市内の自室だった。
 新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、対面のはずだった面接は急きょ、ウェブでのやりとりに変更された。学生はテレビ電話で自主練習して臨み「緊張し過ぎることもなく、できることはできた」と語る。ただ「画面越しだと面接官と目が合っていない気がした。どこまで熱意が伝えられたか…」。想定外の変更に不安が募る。
 就職活動が本格的に始まる3月は例年、県内外で企業説明会が開かれる。説明会は、企業が学生に自社をアピールするだけでなく、学生が企業の雰囲気を感じ取る機会でもある。だが今年は長崎労働局や県トラック協会など実施を見合わせるケースが相次ぎ、就職活動に影を落としている。長崎大大学院の男子学生(23)は「いろいろな企業の話を聞いて試験を受ける企業を決めたかった」と肩を落とす。
 近年の就活は、学生優位の“売り手市場”。ただでさえ、若者の県外流出に伴う人手不足に苦しむ中、自社を売り込むチャンスが減る事態に県内企業にも困惑が広がっている。長崎市の製造業の関係者は「エントリー数が減ってしまわないか不安」とため息。同市のサービス業の関係者も企業名を周知するのに時間がかかると懸念し「中小企業にはダメージが大きい。採用活動を長期化せざるを得ないかも」と嘆く。秋採用を検討する企業もある。
 一方、春闘交渉は中央の大手企業が先週ヤマ場を迎え、賃上げを抑える動きが目立った。県内企業の回答日は5月1日のメーデー前後が多い。コロナショックの中、連合長崎は長崎市内で予定した総決起集会を自粛し、街頭演説にとどめた。
 宮崎辰弥会長は中央で非正規の底上げが進んだことを評価しつつ、今後さらに新型コロナウイルスを理由に厳しい交渉になる恐れを警戒。「労働者の待遇や生活水準を改善しなければ内需は拡大しない」と訴え、中小企業支援の充実も政府に求める。

 


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