県の公表 流れに疑問  新型コロナ感染者情報 

 県内で確認された2、3例目の新型コロナウイルスの感染者に関する、県の情報公開の在り方が課題となっている。個人情報の保護や本人から同意が得られていないことを理由に、感染者の居住地や行動歴などの公開が遅れたことが、県民の不安につながっているからだ。感染者の人権保護と、県民が求める情報の発信は両立できないのか。県の公表基準や見解を探った。
 2例目となった英国在住で高千穂町に帰省中に感染が確認された20代男性について、県は17日午後7時からの会見で、「国外在住」「県北へ帰省していた」と発表。詳細を発表しない理由について、「男性もショックを受けており、現時点で聞き取りできる範囲が限られている」とした。
 詳しい情報がない中、県や保健所には県民から「どの市町村なのか」といった電話が相次いだ。県北部では「(延岡市)北浦町らしい」「市長選の自粛を決めた日向市ではないか」などの臆測が一気に広がった。
 県は18日になって「帰省先は高千穂町」、19日には「滞在先は英国」との情報を明らかにした。公表の理由を「本人の同意が得られたから」と説明したが、情報を小出しにしている印象は拭えなかった。
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 県の公表基準はどうなっているのか。県は3日の対策本部会で感染者の居住地を「県北」「県南」「県央」「県西」まで発表することを決めた。市町村名を公表する必要があると判断した場合は、「本人、自治体の理解を得る」との方針になっている。
 感染症法でも患者の人権尊重を明記しており、県はこれに沿った対応を取っている。また、県健康増進課は「本人の同意のない情報発信をすることで、聞き取りができなくなる恐れもある」との事情も明かす。
 だが、19日の公表の流れには疑問が残った。本人の同意が得られた「英国」の情報は発表文に明記せず、報道陣に問われて初めて回答した。3例目となる同町の郵便局勤務の40代男性についても、夫婦で熊本県を訪れていたことは明らかにしたが、県内での動きは示しておらず、県民に予断を与える恐れが残る。
 こうした状況について、同課は「個人情報の保護、情報提供の観点、感染拡大防止を考えながら必要な情報を的確に出していく」と慎重な姿勢を保っている。

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