『エンド・オブ・ライフ』佐々涼子著 在宅で看取るということ

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 在宅での終末医療をテーマとする本は既にいくつもある。本書が特異なのは、ノンフィクションであると同時に私記でもある点だ。在宅看護の現場を確かな筆致で描きながら、当事者でもある著者が自らの家族の日常を克明に記している。

 「死」をテーマに取材してきた著者は2013年、在宅医療を手掛ける京都の診療所の取材に着手した。だが家庭で重篤な病人を抱える苦労ばかりが目に付いて書き進めることができない。しかも著者自身が心身のバランスを崩し、仕事は途絶していた。

 6年後、診療所の男性看護師に末期がんが見つかったとの報告を受け、取材を再開する。最期を迎える患者の望みをかなえようと奔走する医師や看護師たち。在宅医療の当事者として終末期を思いのままに過ごす看護師。そして著者の実家で難病の母を献身的に介護する父。時間と場所を行き来しながら、それぞれの命への向き合い方が写し取られる。

 患者や家族をあきらめさせない現代医学は残酷でもある。美しく荘厳な最期もあれば、醜く悲惨な現場もある。奇跡を求めて代替医療にすがる者もいれば、自死を試みる者もいる。

 死については誰も本当のことを知らず、逝き方に正解はない。ただ「先に逝く人は遺される人に贈り物を用意する」と著者は書く。彼らは私たちに人生が有限であることを教え、いかに生きるべきかを考えさせ、幸福に生きるヒントをくれる、と。

 テーマは重いが、対象に寄り添いつつも客観的な視線を失わない著者の姿勢が本書に透明感とぬくもりを与えている。

(集英社インターナショナル 1700円+税)=片岡義博