【特集】地元の美しい恵みをいただく(3)

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《奥大山地美恵(ジビエ)(江府町ジビエ解体処理施設)》

■江府町のジビエの拠点として

江府町に新たに整備された江府町ジビエ解体処理施設(通称:奥大山地美恵(ジビエ))は、令和2年2月1日から、任意団体「奥大山地美恵」が指定管理者として運営・管理を行っています。施設では捕獲鳥獣の解体処理、食肉加工、地元業者への販売等を行っていくのみならず、解体処理者の育成を目的とした講習会を開催するなど、解体技術の習得とレベル向上を目指していきます。さらに、江府町独自の新メニューの開発も予定され、今後の展開が期待されます。

〈命と向き合い、確かな技術を継承していく〉

■長年培った技術を伝えたい

長年、食肉加工処理の会社に勤めてきました。これまでに培った技術を次の世代に継承していきたいと考えておりますので、今回ようやく江府町にジビエ解体処理施設が出来たことを大変嬉しく思います。加工処理する時に一番気を付けていることは「捕獲した動物の毛が絶対に入らないようにすること」。安全で、安心なジビエを提供することが何よりも大切だと思います。
江府町内をみてみると、解体処理ができる技術者の高齢化が、年々進んできています。しかしながら、最近は50代、60代の新しい技術者も少しずつですが現れてきました。人材の育成にこれからも尽力していきながら、地元のジビエのおいしさを広く伝えていきたいと思います。

■農地を守るため

この施設を立ち上げようと思いついたきっかけについて、まずはお伝えしようと思います。私は、長いこと農業をしながらサラリーマンをしておりました。いわゆる兼業農家です。そんな中、「家の周りの田、畑、庭を掘り起こすイノシシを何とかしなくてはいけない」と思い、20年ほど昔に罠免許を取得して罠をかけることになりました。1年目は罠に1頭もかかりませんでした。2年目になってはじめてイノシシを捕獲することができたのです。あれから幾年も経ちましたが、今では年間50頭〜60頭ほど捕獲するようになったのです。今では、あちらこちらの方々から「イノシシが悪いことをするから罠をかけてくれ」と頼まれるようになりました。
年々、イノシシやシカなどの被害が増大していると思われます。町内でも昨年度は149頭、今年度は284頭と捕獲数は増加しております。農地を守るために、人助けができればと罠を仕掛けております。捕まえたイノシシを解体しても、ほとんど自分が食べることはなく、みなさまへ振る舞ってきました。
そして、最近テレビ番組等でジビエブームが起こっております。「それなら江府町内にも解体場を作り、捕獲から解体・販売もできるようにした施設を立ち上げたら」という声もあり、解体処理施設をつくることになりました。なお、この施設を開設するのに約2年半の歳月がかかりました。
町当局の理解をいただきまして、町の遊休施設を借り受けました(旧米沢小学校給食施設)。令和2年2月1日より指定管理を受けることができました。これからは山の恵みに感謝しながら、皆様に提供して参ります。施設周りの掃除・草刈・駐車場の整備等、すべて会員のボランティアにより行いました。ご協力ありがとうございました。
最後になりましたが、旧米沢小学校区の皆様には、ご理解とご協力をいただき感謝申し上げます。

■野生の命と向き合う

日野郡でイノシシ猟が本格的に行われ始めたのは、昭和50年代後半と推定されています。それ以前は住民が薪炭材の伐採や牛馬の放牧等により山を利用して生活していたため、人間の生活エリア内に今ほど多くのイノシシは生息していませんでした。
現在、イノシシやニホンジカなどの有害鳥獣が、ワイヤーメッシュや電気柵などの対策が十分に施されていない田や畑を、「良質なエサ場」と認識し、被害をもたらす事例が増加しています。また、豊富な栄養状態により生息頭数も増加傾向にあります。農作物を守るため、まずは田や畑を「エサ場」にしないことが求められ、さらに捕獲駆除することで個体数を減少させることも重要な対策とされています。
有害鳥獣を「ジビエ」として、自然の恵みとしていただくこと。それは、有害鳥獣被害を減らし、山の恵みを有効活用するために、野生の命と向き合いながら、農地を守っていくという強い意志により守られています。